244 ヤヒスの剣
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ドワーフの村に滞在して数日。
ミードリは料理の手伝い、ヴィーシャは洗い物、パムは補助魔法でその作業を助けていた。
「よぉヤヒス」
「やあブント」
「ヤヒスよ、お前の剣を手入れしてやるよ、見る限り使い込んだ形跡があるでな」
「あー・・・うん、よろしく頼むよ」
ヤヒスとブントは工房に行き、そこにある台にヤヒスは剣を置いた。
「やはり刃こぼれがあるな・・・いや、うん?、こりゃ妙だな見た目と本質に違いがあるように見える」
「さすがだなぁ、これはスキルをかけている剣なんだよ」
「どんなスキルだ?」
ヤヒスは結合スキルの話をはじめた。
「ふーーむ、にわかには信じがたいが、そのものを手にすると信じざるをえん、見た目は数打ちのこっぱのような剣だが何かエネルギーを感じる、だがまぁ刃こぼれを無くす位はした方が良いだろう」
ブントは剣を手にして工房の隅の方にある研ぎ場に向かった。
「おっ、また変な剣なのか?」
「いや、見た目はたいしたモンじゃないぜ」
「うん、こっぱの様にしか見えん」
またぞろドワーフ達が集まってきたので、ヤヒスは一から結合スキルの話をはじめた。
「なるほど、納得じゃ」
「見た目は数打ちだが何か力があるな」
「折れればさらに強くなるか・・・」
その内にブントが研ぎに入ると、周囲からはあれやこれやと小声が聞こえてくる。
ヤヒスも椅子にもたれて飽きずにブントの作業を観察していた。
ずいぶんと時間が過ぎても、ヤヒス以下誰も離れずに成り行きを見守っている。
「・・・良し、これでいいだろう」
「へぇ~~見違えたよブント!」
ヤヒスはブントの持つ剣を見て驚きを隠せないようだ。
「どれ・・・試し切りだ」
ブントが外に出て行くと大勢のドワーフがぞろぞろと着いて行く。
外には棒っ杭がいくつか刺さっており、ブントはその一つをポンポンと叩き、態勢を変えた後で斬撃を放った。
だが、杭はそのままの形で変化していない。
「なんだい、やっぱしナマクラだったのか」
「でもよ、そいでもちっと位は切り込むモンだぜ」
「ああ、ちげぇねぇ、音もしてなかったのもおかしい」
「切れておるよ」
ブントが杭を手で払うと上の方だけカタリと外れて落ちた。
「しんじられん、まるで手ごたえが無かった、斬撃が棒っ杭をすり抜けておる、杭自体も斬られたことに気付かんような状態だ」
「わ、ワシも斬らせろ!」
「ワシもじゃ!!」
「おい、俺も!!」
ドワーフがこぞって剣で杭を斬り付けそのたびにどよめきが起こっている。
(あの剣には慣れてしまっていたけど、良く考えたらヤヒスダンジョンで何度も折れて結合していたからなぁ・・・そんなにすごいことだったとは)
「ぬぁお!!岩もバターの様に切れるぞ!?」
「なにぃ!ワシに貸せ貸せ!」
「おい、お前らあんまりやると折れちまうぞ」
「あに言ってるんだ、折れたらまた結合とかでくっつければもっと強くなるだろ」
「そうだそうだ」
ドワーフ連中は子供の様にはしゃいでいる。
「ヤヒスよ、取り上げるような形になってすまんな、皆剣のことになると我を忘れるでな」
「ん?いいよいいよ楽しそうじゃない」
「あのな、ワシが思うにお前の剣が剣としては純粋に一番強いと思っている、他の二人に比べてな、あれらはまぁ伝説クラスだがお前のはナマクラを何度も鍛えあげた形になる、人間もそうだ、下っ端から何度も折れて這い上がってきた者は強い、剣も同じで純粋に強い」
ブントは腕組みをして試し切りをしているドワーフの面々を見つめていた。




