242 宴会
「なに!?ジェネティックアイテムでそれも槍だとぉ!?伝説級の武器を2本も持っておるとはあんた達何者だ?!」
ブントが叫び声をあげる。
「何って冒険者よ、危険な生物を退治したり、未知の場所へ探索に出かけるのよ」
「冒険者・・・良くわからんが一団を組んで何やら旅に出るようなものか」
ヴィーシャはブントに対してそうだと答えた。
「ブント殿、我の持つジェネティックアイテムは名付けた方が良いのだろうか?」
「そりゃもう最初の持ち主が名前となっておると聞いたことがあるぞ」
「そんな前の王の名は我もさすがに知る所にないな」
「良ければその槍も見せてくれぬか?」
リャヒは構わないと答えブントはそれを手に取った。
「フーーーム・・・バランスが取れている、それに美しい飾りが施されておるな、ただもんじゃないわい、それにこれは金属ではないな、何かガラスに近い素材で出来ておる」
「ガラス・・・扱っていた時は気付かなかった」
リャヒは槍を手に取りそれを愛おしそうに撫でた。
「ワシにも触らせてくれ!」
「うむ、見たことの無い素材だ」
「美しいのう」
「この素材はもしや・・・」
ドワーフ達が槍を触り顔を見合わせ何事か話しあっている。
「まさか・・・アダマンタイト・・・いいやそうとしか考えられん」
「む、アダマ・・・何と言ったか?」
「アダマンタイトじゃ、これもまた噂に過ぎぬ代物だが、ダイヤモンドよりはるかに硬い鉱物だとされている」
ブントは槍に見入っている。
「アダマンタイト・・・資料で見たことがあります、ブントさんがおっしゃる通り希少な鉱石で想像外の頑健さだと聞いております」
ミードリもまたアダマンタイトを知っているようだ。
その後もドワーフ達が詰め掛けて大騒ぎになった。
「いや、いいモンを見せてもらった、アンタらしばらく村に泊まるがいい」
「して、金はいくら払えばいいのかのう」
「金?ああここでは金は流通しておらん、三種族間で物々交換で成り立っておる、最も本土では金が流通しておるがな」
フィスは宿泊代金のことを気にしている。
「本土?この島だけの種族じゃないの?」
パムはブントに話しかける。
「おうともよ、この島は一定周期で海洋を移動しておってな、3年に一回本土に着岸するんだ、だが妙なことにいつもの周期ではなく、今回はこの場所に島が流れ着いたようだが・・・」
「ふーん・・・面白いねぇ、浮島なんてのは俺の国にもあるがごく小さなもので、ここまでの大きさではないよ、さすが異世界だね」
「ま、何にしても何も取らんよ、伝説級の武器を二本も拝ませてもらったからな、見てみぃ、皆子供のように喜んでおるわ」
確かにドワーフは嬉々として武器を見て談笑している。
しばらく後に村を見て周ったが存外広く、多くの住人がいることが分かった。
「広い村ね・・・島全体はどのくらいの規模になるのかしら」
「ドワーフの鉱山、エルフって種族の布を生産する規模、それに島全体の食料を賄うゴブリンのことを考えると相当に広い土地が必要だよ」
ヤヒスは顎に手をあてて何やらつぶやいている。
そこにブントがやってきて声をかけて来た。
「お前さんら、今日は宴会だ、歓迎会だな!それとしばらくこの集落にとどまってくれても構わんからな」
夕暮れ時になると魔石が灯されて、質素な村ながらも雰囲気の良い空気があたりに漂った。
「伝説級の武器を持ってきた来訪者に乾杯!!!」
ドワーフ達の大きな声がこだましている。
「ふーん・・・パンはライ麦か、味がちょっと違うからソヴィルバーレ周辺の種とは違う種を植えているのかな・・・それに豚も良く脂がのっている・・・ゴブリンの集落にも俄然興味が出て来たぞ」
ヤヒスは農家としての血がうずいているらしい。
リャヒは父祖の槍についてドワーフに話しており、彼らは興味深そうな顔で聞き入っている。
各々気が合うものが出来たらしく、旅の話しやそれぞれのスキルについて話したり、実際に見せたりしている。
楽しい夜はまだまだ続く。




