238 オオカワ
小雨の中黄昏パーティー一行は街路を歩いていた。
「とりあえず冒険者ギルドね、そこに話が通っていればいいけれど」
「うん、いずれかの偉い人に会うことにはなりそうだね」
ヤヒスとヴィーシャは肩を並べ、足元を濡らしてギルドに向かった。
「ギルドが見えてきました」
ミードリがそう言うとマサカツはため息をついた。
「はぁ、どんな扱いを受けるかなぁ・・・面倒だなあ」
ヴィーシャはギルドの木戸を開けて真っ直ぐに受付に向かいながらフードをおろし、その後を全員が付いて来た。
「おや、アンタたちは見覚えがあるねぇ、ぬえやなんかを討伐した一団だね」
受付嬢はカウンターに肘をついて煙管を吹かしている。
「そうよ、そして名誉か不名誉か神殺しと呼ばれているわ」
ヴィーシャがそう言うと受付嬢が唖然とした様子で口を開いた。
「アンタたちが例の・・・じゃあ今回の出島の件を受けたのは」
「そうです、俺たちが例の島を調査する役割をいただきました」
ヤヒスがそう伝えるとギルドの中がざわめいた。
「出島の・・・ええ、おっかねぇ仕事を押し付けられたな」
「神殺しってあの、ふん、一つ事件を解決するとまた一つと押し付けられるわけだ」
「でもよ、神殺しってなら強えぇんだろ?」
冒険者たちは手前勝手なことばかり喋っている。
「あら、たいへんだね、オオカワ様んところに連れてかなくちゃ!カヨちゃん、受付お願いね」
受付嬢は受付台から出てきて傘を持って外に出た。
「着いといで」
全員またフードを被りなおして彼女の背を追った。
ずいぶんと歩みを進めた所で受付嬢が大きな屋敷の前で手招きしている。
彼女は屋敷に入り、大声を出して言った。
「オオカワ様!オオカワ様!出島の件で人が来てくれたよぅ!!」
しばらくすると奥から中年男性が現れて受付嬢に声をかける。
「なんだ、騒々しい、お前は奥ゆかしさが足らんと・・・」
「オオカワ様!出島上陸の一団が来てくれたよ!」
「・・・なんと!」
オオカワ様と呼ばれる男はヤヒス達をみて驚いている。
「黄昏パーティーです、島の件でまかり越しました」
ヴィーシャが頭をさげると全員それに倣った。
「おぉ・・・神殺しの、早く上がられよ」
「コートはどこに置けばよろしいでしょうか」
全員、コートを脱いで手に持っている。
「う、うむそこいらに重ねておかれよ」
「では」
そう言った流れがあったあとで、下男に案内されて屋敷に上げられた。
案内された部屋はとかく大きなもので、下男は座布団を敷いて退室した。
床の間があり、書机が設えられている所を見ると、何かやり取りをする部屋のように思える。
襖がさっと開いたかと思うとオオカワが現れて厳格な様子で歩き、書机に座った。
何かの帳面をめくるとそれを厳しく見つめて時折うなづいている。
「黄昏の一団、良く来てくれた、国外に頼むのは本来は恥と考えられたが、神殺し異名をとるそなたたちの話を耳にして上様は是非にと申されてな、出島の件をたのむことになったのだ」
「お目通り、お目にかけいただき光栄にございます、まずは詳しい話を聞きたく存じます」
ヴィーシャは滑らかな言葉でオオカワに対応している。
「うむ、そうだな、まずは全員の名前を頂だいする」
その言葉を受けてヴィーシャは氏名と役職を名乗り、それに続いて他の者も名前と役職を述べていった。
「うむ、では本題に入ろう、あれは20日ほど前であった、突如として海上に島が出現していたのを、漁師が発見したのだ、いや、国中大騒ぎでな、上陸するしない、何か害悪なものが上陸するのではないかと、上を下へと大騒ぎでな、取り急ぎ出島と名付け会議が開かれたのだ」
オオカワはその後も朗々として語り、一行は座して聞くだけと言う塩梅式になった。




