236 ドルガン王国のクエスト②
ロックドラゴンはヤヒスの結合スキルで一つに合わさった岩盤に挟まれて圧死した。
「ふぅ、あぶなかったねぇ、咄嗟に漫画の場面が思い浮かんで助かったよ」
マサカツはため息をついた。
「本当に危ない所でしたが、皆さんけがはありませんか」
ミードリがそう言うと
誰も怪我をしていないことが分かった。
「ふーん・・・結合にこんな使い方があるとは思いつかなかったわね」
ヴィーシャは岩盤の上に乗って岩を蹴り何やら感触を確かめているようだ。
「いや、俺も想像しえなかったけど、よく考えればなんでもないことだったね」
ヤヒスは座り込んで身体の力を抜いている。
「ヤヒスよ、我が思うになんでもないことではないぞ、岩盤でドラゴンを圧死させるなど出来るものではない」
「とんでもないこと、すごいこと」
リャヒとパムがヤヒスを見てあきれたような感心しているようなことを話している。
「とりあえず、目下の問題はこのどこかに埋もれているドラゴンの魔石を取りだすことね」
「じゃあ最初大まかに、だんだん細かく剥離していくよ、岩をどけるのは・・・フィスにしかできないよなぁ」
ヴィーシャとヤヒスが岩盤の上で相談していると、フィスもそれに加わった。
「岩をどけるのなんざワシの力であればへーちょだわい、まかせておけマスター」
こうして岩をどける作業が始まった。
「ふぅ、ずいぶん作業したけどまだ見つからないな・・・そろそろのはずなんだが」
ヤヒスが手を腰にやっているとフィスがやってきた。
「マスターよ、休んでくれ、このくらいの岩ならなんてことない、なに、一人で魔石を見つけてみせるわい」
「いいのかい?助かるよ」
そう言ってヤヒスは岩の上から降りてきた。
「おつかれさま」
ヴィーシャが声をかけてくる。
「うん、ありがと」
「しかしフィスは本当にドラゴンであるのだな、あの小さい身体で岩を麦束のように投げている」
「私にも不思議な光景に見えます、小さな女の子ですもんね」
リャヒはミードリとともにフィスのことについて話している。
そこへマサカツがやってきて、二人に質問した。
「フィスってああ見えて何歳なの?喋り方もおっさんみたいだし」
「200歳だそうです」
ミードリがそれに答えるとマサカツは笑っている。
「ははは・・・やーっぱそうかぁ、何歳ぐらいまで生きるんだろうねぇ」
「それなんですが、調べてみても冒険者が見かけたり、討伐した種類のことしか書いて無いんです、どんな攻撃をするか、何に弱いのか、そう言うことです」
「うーん相手はドラゴンだから観察するのも大変だろうし、だいいち人間の寿命では観察しきれるわけがないよね」
二人はその後も何やら親しげに話している。
「あったぞーーーい」
フィスの声が聞こえてきたので、ヤヒスは走って岩を登った。
「ほれ、マスターよ」
「おっとい・・」
フィスは魔石を投げてきたのでヤヒスは落としそうになった。
「フィス、ありがとう、良くやってくれたね」
ヤヒスがそう言うとフィスはヤヒスの腰にしがみついて顔をうずめた。
(200歳なのか小さい女の子なのか本当に分からなくなるな・・・)
ヤヒスはフィスの笑顔を見てほほ笑んだ。
「さぁとっとと帰るわよー」
ヴィーシャの号令で全員帰路についた。
ドルガン王国の宿に荷物を預けた一行は、温泉に向かう。
「うぅ~~~い最高だわい」
「あなたおっさんじゃないんだから・・・」
フィスに向かってヴィーシャが口を出している。
「ははは、たしかにおじさんみたいですからね、ところでパム、魔力の回復を感じる?」
「私は微量ながら感じている」
「私もです、微量ですが確かに感じています、これはすごいことですね・・・」
「これは冒険者も女性も集まりますね」
「ドルガンは潤う」
温泉、それは多くの者が虜になる施設である。




