235 ドルガン王国のクエスト①
黄昏パーティー一行は朝からギルドに入り、張り紙を見比べていた。
「うーん・・・うん?1か月前のクエスト、これは難物ってことになりそうね」
ヴィーシャは張り紙を取って受付に向かった。
「クエストですね・・・このクエストを受けてくれるんですか?助かります、このロックドラゴンのクエストは失敗が続いて誰もうけなくて、でも神殺しパーティーさんなら大丈夫ですね」
「なによその神殺しってのは」
「あっ、失礼しました、あなた方、特にヤヒスさんが悪しき神を倒したことで冒険者の間ではそう呼ばれています」
ヴィーシャは受付嬢の話しにあきれ返ったという表情をした。
「そんなことになっているのね、神殺しだかなんだか知らないけど、受けたクエストはキッチリやり遂げるわ」
ヴィーシャは真剣な顔でそう言った。
「ええと223坑道ね・・・」
ヤヒス達は町を出て坑道を探している。
「ですがだいじょうぶですか?相手はドラゴンですよ?」
「ドラゴンはウチにもいるし、あの神のヤツに比べればたやすいものよ」
「おう、ドラゴン様だぞ、しかしロックドラゴンだぞ?火炎魔法も効果は無いしワシの火炎もあまり効果が無い」
「剥離の出番ってわけか」
ヤヒスとフィスが会話している。
そうこうしているうちに223坑道にたどり着いた。
「大きいわね・・・」
「ドラゴンが入るくらいだからねぇ・・・」
ヴィーシャの感想にマサカツが言葉を重ねた。
坑道内には魔物が出る気配がなく、ドラゴンに怯えて逃げて行ったのだろうとミードリは仮説を立てていた。
「んっ、もう少し行くとお出ましだぞ、ドラゴンの気配がするわい」
フィスは同種だからかドラゴンの気配を感じ取ることが出来る。
彼女の言うようにしばらく歩いて行くとドラゴンが伸びあがりこちらを見下ろしてきた。
「じゃあ行くよ、剥離!!」
ヤヒスはそう叫んだがドラゴンには何も起こらなかった。
「剥離!!」「剥離!!」
「おかしいよ!剥離が効かない!!」
「これはスキル無効の個体ですね」
その時ドラゴンがゆっくりと口を開き始めた。
それを見たパムは補助魔法を幾重にも重ねて防御の体勢に入った。
ドラゴンの口からは石つぶてが勢い良く吐き出され、シールドを叩いている。
「直接食らえばズタボロになるぞこれは・・・」
マサカツは肩をすくめている。
「マサカツ!あなたの知識で何かいい知恵は無いの!?」
ヴィーシャの問いにマサカツが答える。
「ロックドラゴンが出てくる民話なんてないねぇ!でもなにかいいアイデアがないか・・・漫画だとどうする??地面叩いて大砲でも出すか?」
「シールドがあと少しで消える、窮地」
パムが伝えてくる。
「ふんむ・・・ワシがドラゴンに戻って戦うしかないかのう・・・しかし格闘となると落盤でお前たちが下敷きになる」
その時後ろからパンと手を叩くような音が聞こえた。
振り向くとマサカツが両手を合わせて拝むような形にしている。
「ヤヒス!岩盤でドラゴンを挟め!!」
「・・・そうか!剥離ではなく結合!結合スキルは岩に作用するからスキル無効にも関係ない!!結合!!」
ヤヒスは叫んで両手を勢いよく合わせた。
すると坑道の左右の岩盤が剥がれて、勢いよくロックドラゴンに叩きつけられ、魔物は圧縮される状態になり、同時に石つぶてを吐き出す攻撃が止んだ。
同じくしてパムは膝をつきシールドが消滅する。
「危なかったわ・・・一息遅かったらシールドが消えて石つぶてを食らう所だったわ」
ヴィーシャはそう言いながらパムの肩を叩いた。
ドラゴンは岩盤に両面から押しつぶされる形となり、軋る音と共に外皮にひびが入りだんだんと圧縮に抗えなくなっていった。
ヤヒスは相変わらず手を合わせたままだが、その手をぐっと押し込むと、岩盤は完全に合わさり隙間から光が漏れてドラゴンが息絶えたことが分かった。




