231 恐慌の町
「はい、大盛りね」
そう言ってヤヒスは椀に盛られたコメをフィスに渡した。
彼女は味噌汁をすすった後でコメをわしわしとかき込んでいく。
他のメンバーも同じような具合で、食を進める。
「む、このしなびた野菜はなんだ、ヤヒスよ」
リャヒの言葉だ。
「ああ、それは東方で買ってきたツケモノと言う食べ物で、長い間腐らないで食べられるそうだよ」
「漬物!!うぉおおおお・・・米に漬物とはまさか異世界で食べられるとは」
マサカツコメに乗せて勢い良くかき込んだ。
「う、しょっぱい、けれどコメに合わせるとちょうど良い具合ね」
ヴィーシャはツケモノを気に入ったようだ。
食事は黙々と進んで行き、ついにコメがすべてなくなった。
「あーらら、あれだけ炊いたのに全部なくなったよ、残りはオニギリにしようと思っていたんだけど」
ヤヒスが鍋を拭きながらあきれた表情をしている。
「東方の食事もコメもおいしいから仕方ない」
パムがヤヒスを手伝いながら言った。
食事もすんで一息つくとフィスがヤヒスに話しかけて来た。
「マスターよ、ここから南に3000メルトほど進んだ場所に比較的大きな町が見えたが、どうするかの?そこまで行ってみるかのう?」
「それくらいの距離なら歩いて行けるね、もう少ししたら行ってみようか。
休憩を終えて町がある方まで進んで行った一行だが様子がおかしいことに気付いた。
「変ね、街道らしきものがあるのにほとんど草に埋もれているわ」
「うむ、長いこと使われていないと言うことであるかな」
ヴィーシャとリャヒが何かやり取りしている。
しばらく進むとミードリが声をあげた。
「みなさん!あれを見てください!」
ミードリのロッドが示す先には何体かの白骨死体と木々が焼け焦げたような跡があった。
「穏やかじゃないねぇ・・・これはもう、都市が機能していない可能性が高いね、何だろう、反乱?他国の進行か?」
マサカツが顎に指を当てる。
「ま、とにかく行ってみにゃ始まらんわい、せっかく苦労して山脈を越えたというのに、ここで帰りますーでは話にならん」
フィスの言葉に全員がうなづく。
やがて町が見渡せる小高い丘に出ると、中規模な都市が目に入ったが、それは少なくない部分が焼け焦げ、丘の近くまでも白骨死体が転がっていた。
それでも黄昏パーティー一行は歩みを進めて城門をくぐる。
町の入り口には古代語が記されている。
「うむ・・・バロルエイエーダと書いてあるな」
リャヒのロッドはジェネティックアイテムであり、古代語を読むことが出来る。
「うっ・・・ひどいわね」
ヴィーシャが声をもらす」
「うむ、死体だらけであるな」
リャヒも声を出して目を細める。
しばらく町を進むが、どこも似たような惨状で生者は一人もいなそうであった。
ベンチに崩れ落ちている死体を見てミードリが声を出した。
「これもそうですね、斧や剣で頭を割られた跡があります火事のあともありますが大規模なものではなく、どこかの軍が攻め込んできた者とは様子が違います、おそらく内部の動乱でしょう」
「うん・・・動乱には必ず原因がある、原因を探るために役所のような場所へ行ってみよう」
マサカツがミードリに同調する。
「立て看板にあった総合統括局はここか・・・」
リャヒは古代語を読みながら建物内に進み、全員それにならった。
「うっ、ここは一層破壊がひどいね」
ヤヒスは複雑な顔をしている。
「そうですね、ここに何か原因と言うのでしょうか、重要な何かがあるからかもしれません。
ミードリは焼け跡を見ながら言った。
「では正解を探さないといけない」
そう言ったパムの言葉に全員がうなづいた。




