新章第二章:226 山脈を超えろ①
一旦完結した物語ですが、アイディアがたまったため再開し、新章スタートになります。
新章:第二章
登場人物
ヤヒス:男 本作の主人公、農家の出身だが「結合」「剥離」のスキルを器用に使いこなし、剣の腕もたつ。
ヴィーシャ:女 ヤヒスをパーテイーに勧誘し、知性を持つ大剣インテリジェンスソードで戦う。
ミードリ:女 火炎魔法に特化した魔法使いで、卓越した記憶力と高い知性を持つ。
パム:女 補助師、バフ効果やヒールなど多岐に渡る魔法をあやつる。
フィス:女 ダンジョン最深部にいた炎竜で、普段は少女の見た目をしており、並外れた格闘技を扱う。
リャヒ:男 世間から魔王とされていた人物、美麗な見た目をしており先祖伝来の力が込められたジェネティックアイテムの槍を使う。
マサカツ:男 悪しき神が倒されたのち神の後任として現代日本から召喚された大学生、天才的な頭脳で窮地を切り抜ける。
チヌック:グリフォン 死にかけの鷹と魔物を結合した後に、名前を受けてグリフォンとなる、パーティーの移動手段だが、戦闘にも参加する。
勇者パーティー対決からしばらく経過したある日、マサカツがミードリに質問を投げかけた。
「ミードリ、ちょっと聞きたいことがあるんだけど」
ミードリは読んでいた本に栞をはさんでマサカツの方を見る。
「何でしょうか」
「いま広げている最新版の地図なんだけど、西の山脈以降が何も書き込まれていないが、何か理由があるのかい?」
「それは・・・誰も山脈を超えたことが無いからです」
「僕は見たことが無いんだけれどそんなに大規模な山脈なのか・・・」
「何人も山脈越えに挑んでいますが、早々に引き返して来るか戻ってこなかったと言われています、ですからもう誰も近寄らない場所になっていますね」
「どんな様子なの?」
「どんな・・・と言われても遠くから見ても全然近付かないようにみえる規模で、一年中雪をかぶっています」
「ふーん・・・万年雪だと5000m越えか、いや俺の世界の常識は通じないから何mあるか見当がつかないな」
「それだとチヌックでも越えられないだろうな、うーんすごく興味があるんだけどな」
二人のやり取りをソファーで寝そべりながら聞いていたフィスがマサカツに向かって言った。
「ワシじゃ、ワシなら出来る、以前見たがあの程度ならへーちょで飛び抜けられるわい」
「あっそうか、フィスはドラゴンだったね」
「ふだんはこの通りなので完全に忘れていました」
「フフン、チヌばかり出番があってワシも寂しい所でのう」
フィスは腰に手をあてて笑っている。
「ふーん・・・ああ、そうか酸素と温度の問題があるか」
そこに買い物から帰ってきたヤヒスとヴィーシャが割って入った。
「なるほど、西の山脈の向こう側ね、面白そうね!ところで、酸素と気温ってどう言うこと?」
「まずは気温、気温はだいたい100ミルト上がると0.6度、ああそうだ温度単位は無いんだった、そうだね2000ミルト登ると真夏が秋の寒さになるよ4000ミルトで冬6000ミルトで極寒で防寒着を着てもまともに動けないよ、さらに8000ミルト登ると極寒を超えて空気が地上の1/3になる」
「フィスで越えてもそうなのかい?」
ヤヒスは荷ほどきをしながら声をかけた。
「同じだね、山を越えるには防寒着が必要になるし、酸素はどうにもならないが動かなければ大丈夫なのかな」
「何か賑やかかと思えば防寒着とか聞こえたが」
リャヒが階段を降りてくる。
「極寒の地を通るから必要」
パムはリャヒを見上げながら言う。
「それならばプルツ国に余るほどあるぞ、あの地の冬は厳しいものでな」
「そっか、北方だもんね」
ヤヒスが椅子を反りかえらせてつぶやく。
「じゃあまずプルツに寄ってその足で西の山脈に向かえばいいのね」
ヴィーシャが指を立てて明るい顔で言った。
「いえ、マサカツさんが言うには酸素が地上の1/3になるそうです、呼吸はどうしましょう」
「ワシは呼吸は問題ないがの」
フィスがミードリに話しかける。
「うーーーん、何だったかな小学生の理科・・・大学の抗議でも古代人が利用していたとか・・・二酸化マンガンの原料が思い出せれば」
「マサカツがまた俺たちにはわからない話をしているよ」
ヤヒスは頭に手をあてているマサカツを眺めている」
そのうちだれともなく屋敷のどこかへ散って、ダイニングにはミードリとフィスだけが残った。
夕食の支度にヤヒスが二階から降りてきてもマサカツは紙に何か書きつけていた。
「あっと、じゃがいもが落ちちゃったよ」
ヤヒスがそう言ってかがんだ時にマサカツは大声をあげた。
「思い出した!!じゃがいもだ!!それと黒色顔料!!!これならこの世界でも手に入る、なんだ簡単じゃないか」
ヤヒスは拾ったじゃがいもとマサカツを見比べていた。




