220 ピルム国の神③
ピルム国に祭囃子が鳴り響いている。
本番に向けての練習である、ヤヒスは北人に笛を教え、他は各々担当の楽器を叩いている。
「うん、良くなってきたね」
「そうであるか、政務があって見に来られなかったがいい音だな」
マサカツとリャヒは和やかに話している。
それからしばらくすると祭り当日になり、国中から北人があつまりがやがやとしている。
「さーあみんな、音が聞こえたら僕の真似をして身体を動かすんだ!うまくやろうなんて考えなくても良いぞ!身体を動かすんだ!それっ!」
マサカツが指示を出すと太鼓がドンドンと打ち鳴らされ、笛が調子を整える、拍子はカンカンとリズムを乗せている。
マサカツは腕をくねらせつつ脚を交差させるような動きを見せている。
次第に北人たちも踊りだし、その場は熱気に包まれた。
みな出鱈目に近い形で舞い踊り、笑顔と笑いに包まれており、国王であるリャヒは満面の笑みでヤヒスと踊りを交わしている。黄昏パーティー一行も、もちろん踊りに加わり、ヴィーシャはひときわ華麗な動きを見せている。
時間がたち太鼓が連続で叩きならされると曲は止みそこらじゅうで歓声が上がり抱き合うものや肩を組むもの、人間も北人もへだてなく手を組んでいる。
そこに拍子がカンカンと叩きならされ、集団は静まり返った。
「皆たのしかっただろう!これは神にささげる踊りであるが国民が楽しむことが神への捧げものとなる!神よ楽しく過ごせているからいつもありがとう、と示す理なのだ!」
マサカツは声を張り上げて踊りの意味合いを北人たちに伝えている。
「もう一度おどりたいかあああ!?」
マサカツが叫ぶと、塊となった声がわきあがる。
「ハッ!ほい!」
マサカツが調子を出すと、楽器が再びかなでられ、おどり狂う北人の群れは素朴だが力強い人々に見える。
「すごいわねマサカツは・・・木切れや鉄の板切れからここまでの一体感を生み出すなんて」
「あまり難しくないのが良いんでしょうね、型にはまった踊りだとこうはいきません」
ヴィーシャとミードリが感心しながら会話している。
「フィスは飛んだり跳ねたりしていたけど、今はオークに肩車されてはしゃいでいるよ」
パムがそう言っていると、リャヒが現れて話しかけてきた。
「どう思うね?」
「どうって・・・?」
「我は素晴らしい光景に見える、このような光景を目にするとは思わなんだ、かつては魔物と称されていた我ら北人と人間が笑顔で踊っている」
「そうね、良かったわ」
リャヒとヴィーシャが言葉を交わす様子を大木はただ静かに見下ろしていた。
次回で最終回となります。




