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217 麦秋

東方からソヴィリバーレに戻った一行はパーティーホームでくつろいでいた、そこにリャヒが戻ってきてしゃべりだした。


「2-3日ピルム国へ戻らねばならぬ用事が出来た」


それを聞いたヴィーシャが全員で行こうと言いだす。

「いいね、農地改良がどれだけ進んだのか気になるんだ」

ヤヒスは興奮気味に言う。


「マスターは本当に農業のことが気になるんだのう」

スフィはヤヒスの隣に座り込みそう言った。

「そりゃそうさ!俺は農家の出稼ぎだからね!」


「ヤヒスさんはまだ自分が農家の出稼ぎだと思っているんでしょうか・・・」

ミードリがパムに話しかける。

「国が認める冒険者だよ、だけれども心は農家なんだろうね」

パムはぽつりと言葉を返す。


チヌックに乗り日数をまたいでピルム国へたどり着いた一行は、その領地内に黄金の輝きを目にした。


「わはははっ!ライ麦がこんなに元気に育って!!はははは」

ヤヒスは走り出した。


「麦秋だーーーー!!!」

マサカツも走り出すとヤヒスを後ろから羽交い絞めにした。

「な、なんだよマサカツなにすんだよ!?」

「ライ麦畑でつかまえて!!これがやりたかった!!」


二人は良くわからないなりにはしゃいでいる。


「む・・・マスターを抱きしめるとは許せんのう」

フィスはむくれている。


「王よ!良くぞお戻りで!!」

大臣がリャヒを迎えて笑顔で話しかけている。


「うむ、お前も大事無いか?しかし見事なライ麦畑だな、良くやってくれている」

「はい、ソヴィリバーレの農業指導者が熱心に教えてくれておりまして」


リャヒがあたりを眺めると人間とオークに、コボルトが談笑しているのが目に入った。

「和平は正解であったな・・・いや、恐れずもっと早くから人間と友好を深めるべきだったのだ」


ヴィーシャ達が遠巻きにその様子を見ていると、オークと連れ立った老人が近づいてきて話しかけてくる。


「あんたがたが和平のきっかけになった冒険者たちかい?」

「ん・・・そう言われればそうかもしれないけれど」

ヴィーシャは顔をかしげている。

「ですが武力によるものでした、多くのピルム国民が私たちのために・・・」

ミードリは頭をさげる。


「やめてくれえやぁ、こっちが先に仕掛けて隙あらば人間の領地を奪おうとしたんだからな悪いのはこっちさ」

オークはにこやかな顔をしている。


「平和そのものだね」

パムがそう言うとその場の全員が黄金のライ麦畑を見つめた、そこには、はしゃぎまわるヤヒスとマサカツ、大臣と談笑するリャヒの姿があった。


それはかつて魔王とされていた男。

神としてこの大地に派遣された男。

農家の出稼ぎとして家を出た男の三様の影が夕日に伸びていた。

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