207 ドラゴン対ドラゴン②
うめき声をあげるグリーンドラゴンを見て、フィスは回し蹴りを腹部にお見舞いした。
グリーンドラゴンはまたしても吹き飛び、大森林を転がっていった。
「あいつ・・・炎を使わない気だ・・・」
ヤヒスがそう言うとミードリはそれに答えるように言った。
「炎はウロコである程度防がれてしまう、お互い決定打が出ないのでしょう、それよりも身体にダメージを通す方が効果的なのかと」
グリーンドラゴンは走ってきてフィスの顔面に拳を叩き込もうとしたが、フィスは素早くしゃがみ込みそのまま起立する勢いでグリーンドラゴンを後方に投げ飛ばした。
そのあとフィスは振り向き、仰向けのグリーンドラゴンの胸に執拗に蹴りを叩き込みだした。
グリーンドラゴンが起き上がれなくなるとフィスは即座に地面へ寝転がり、グリーンドラゴンの踵を腕で締め上げだした。
相手はもがき苦しみ、その内にゴキリと言う大きな音が聞こえてきた。
フィスは立ち上がると、グリーンドラゴンから離れて様子を見ている。
彼はよろよろと膝をつくと羽を広げて山脈の方へと飛び去って行き、フィスはその背に大きな咆哮を叩き込んだ。
その後フィスはポンと言う音とともに人間の姿になって戻ってきた。
その身体はあちこち擦り傷のようなものが付いていた。
「パム、ヒールを!」
ヴィーシャがそう言ったが、フィスはそれを拒否した。
「フン、戦いの傷跡は勲章よ!消すなどもったいないわ!」
彼女は未だ興奮冷めやらぬと言ったところだ。
「しかし君ねぇ、ドラゴンの姿でも格闘技やるんだねぇ・・・」
ヤヒスがそう言った。
「マスター、考えうる最良の策があれなのだ、これでもドラゴン同士思うところもあるんでな、殺さず逃がしたわけよ」
「また戻ってきたら?」
パムはフィスに向けて疑問を発した。
「ドラゴンも縄張りがあってな、あそこまで痛めつけて最後に怒鳴りつけてやったのだ、ビビって二度とこの辺りには現れんよ」
「しかし魔石を取り損ねたな、役所にどう説明するがいいか」
リャヒは腕を組んで考えている。
「倒しはしたけれど、魔石は大森林に落ちて探せなかった・・・そう言う具合に話しましょうか、最初は信用されないと思いますが、その後目撃例が無くなれば役所も良しとするでしょう」
「しかしえげつない戦いだったわねぇ・・・」
ヴィーシャがフィスを見つめてつぶやいた。




