21 ロックトータス
一行はヤートダンジョンに向かっていた。
王都から山に入りうっそうとした低木を踏み分けて行くとそれはあった。
岩がむき出しの洞くつで、ひやりとした空気が流れ出てきている。
岩肌には。
「ヤートダンジョン」とプレートが刻まれている。
「着いたわね、これが駆け出し冒険者の通過儀礼、ヤートダンジョン」
ヴィーシャは嬉しそうに見える。
「なんだか嬉しそうだな」と話し掛けると。
「それはそうよ、ここを攻略したら駆け出し卒業だもん、Fランク卒業よ」
「とにかく慎重に進みましょう」
ミードリが提案する。
パムは黙ってダンジョンの入り口を見ている。
ヴィーシャを先頭に洞窟に踏み入ると、パムが「光球」を出し周囲が明るくなる」
「おお、これはすごいな、ずいぶん明るい」
と言葉をもらすと、パムが話し掛けてきた。
「光球が無い場合はライトクリスタルを使う、でも大抵のパーティーは支援師をメンバーいれている」
パムはどこか自慢げに見える。
「そうよ、支援師は人気職なの、パムがメンバー募集に来なかったら、冒険にも出かけられなかったわ」
ヴィーシャはパムの肩を叩きながら言う。
しばらく進むとベビーゴブリンの群れと出くわした。
彼らはギィギィと威嚇しながら近づいて来る。
パムが支援魔法を展開してすぐにミードリが火炎魔法を放つ、狭い通路だったため、炎は収束して威力が増し、ベビーゴブリンの群れを一撃で倒した。
「すごいじゃない、あの数を一撃よ!これはいけるわね!」
ヴィーシャが喜んでいる。
ミドルバットも同じだった、群れを形成するので炎でまとめて処理しやすいのだ。
ダンジョンラットは素早く、攻撃を当てるのに苦労したが、ヴィーシャも慣れてきたのかうまく捌いているようだ。やがてダンジョンの最深部に到達した。
「魔力が少なくなっています、もう出ましょう、ほとんどの魔物を討伐したから帰りは出てこないと思いますが」
ミードリがそう言うので、四人は洞窟の出口に向かった。
出口まであと少しと言うところに馬ほどの大きさの岩が転がっている。
「変ね、来るときこんなのあった?」
ヴィーシャがそう言うと同時に岩が動き出した。
「ロックトータス!」パムが叫ぶ
「ロックトータスは中級冒険者レベルよ、私たちではかなわないわ、逃げるのよ!」
「奥は行き止まりだ、逃げ道なんかないぞ!」
ヤヒスが叫ぶ。
「やるしかないわね」
ヴィーシャが剣を構えてスキルを使う
「ダブルスラッシュ!」
しかしカン高い音とともにはじかれてしまう
「剣が通らないわ!」
ヴィーシャが飛びのいたところに、ミードリが火炎魔法を放つ、ロックトータスは甲羅に閉じこもり、火炎を防いでいる。
顔を出したところにヴィーシャが斬り付けるがこれも通らない。
「どうしよう、コレまずいんじゃないの」
とヴィーシャ
ロックトータスは口を開け光を貯めている、何がしかの攻撃が来る予兆だ。
ヤヒスはとっさに飛び出して無意識にスキルを使っていた。
「剥離!」
剥離スキルの光を浴びたロックトータス。
甲羅や脚などを覆う岩塊全てはじけ飛んだ。
途端に叫び声をあげ地面に倒れ伏して塵となって消え、魔石だけが残った。
「え?倒したの?どうやったのよ」
ヴィーシャがヤヒスにたずねる。
「それが俺にもよくわからないんだ」
パーティーの全員があっけにとられていた。