201 ガラスの女神像
謎の火災が頻発する湖畔の町サナルで、その原因を突き止めて対処せよとのクエストが国からくだされたためヤヒス達は現地に向かった。
「本当だ、焼け焦げているよ」ヤヒスは地面しゃがみ込んで焦げ跡を眺めている。
「冒険者が魔法の練習をしてただけなんてなったらお笑いだわよね」
ヴィーシャは軽い笑い声を出した。
ミードリは焦げ目をじっくり観察している。
「なにか・・・法則性が・・・?」
「さっすがミードリだね、原因はこのガラスの女神像だよ」
マサカツは笑顔で女神像を指さした。
「どういうことですか?」
ミードリが興味深いと言った面持ちでいる。
「うん・・・このガラス像は凹凸が多いよね、そしてここは日当たりも良い、女神像がレンズの役割をして焦点に引火しているんだね」
「そんなことがあるんですか・・・?」
ミードリは驚いているが、他の二人は何かよくわからないと言う表情をしている。
「えーと・・・つまりこの女神像のせい?」
「そう言うこと、僕のいた世界でも少なからず発生している火災の原因だよ」
「じゃあ、この像を撤去すればいいじゃない」
ヴィーシャは女神像の台座をコツコツ叩きながら話している。
「多分それは厳しいと思いますね」
ミードリが困り顔で言った。
「そうだね、何かの意味があってこの場所に建てたのだから撤去するのは拒まれそうだね」
マサカツがそう言った折にヤヒスが質問した。
「あのさ、ここに何か熱に強いものを敷けばいいんじゃないかな」
「ご明察、多分鉄板を敷けば解決するよ、鉄板にも装飾を施せば格も上がって一石二鳥じゃないかな」
「ふーむ・・・マサカツのスキルは知識と器用さだと思うんだけれど、あなたの国ではどういう教育をしているの?」
ヴィーシャが問いかける。
「うん?この女神像での炎上の仕組みは、多分5歳くらいから認識するんじゃないかな」
「え!?そんなに幼いころから?」
ミードリが驚いている。
「あのパチパチやる計算機も5歳くらいから上手に扱う子がいるよ、ああそうだ、野球もその位から始めるし簡単な計算ならスラスラやってのける子もたまにいるよ」
「もしかして・・・マサカツのスキルはものすごく貴重なんじゃないかな」
ヤヒスがマサカツの方を見て話し掛けた。
「全員とは言わないけれど、僕の国ではこのくらいのスキルを身に付けている人はそれなりに存在するんだよ」
「神とされてここに来るわけよね」
ヴィーシャは腕組みしてあきれた顔をしている。
「でも僕はこの世界の文明を大きく変える気も無いし、発明品も自分か君たちだけで使おうとドルガンにいた時に思ったよ」
マサカツは女神像を眺めながら言った。




