198 白球③
野球回です
国の威信をかけた野球対決が行われている。
時は進み5回、3対5でソヴィリバーレ側が負けている。
バッターボックスに立っていたギルド長からミシリと言う音が聞こえた。
デッドボールである、しかも顔面に打球が入り眼鏡が割れている。
ギルド長は目を細めると帽子を地面に叩きつけてピッチャーに向かって歩いて行く。
「あぁああああ!!とめろぉおおおお!!!」
ヤヒスは大声を出して走り、チームメイト全員で止めに入った。
相手チームも出てきてもみ合いになっている。
しかし観客は大興奮で手に持ったゴミなどを投げ入れている。
しばらくして場が収まったがこの回、ソヴィリバーレ側は一点も入れられなかった。
そのままもつれ込んで最終回、ツーアウト、盗塁に成功したヴィーシャが2塁、バッターボックスにはフィスである、開幕ホームランを決めたフィス登場で観客はざわめき、相手チームはマウンドに集まり何やら相談している。
注目の一球である。
だが、ボールはフィスから遠くに投げられ、立ち上がったキャッチャーのミットに収まりボール玉となった、二球目も同じコースでボールだ。
「これ・・・敬遠ってやつじゃないのか?」
イエールがつぶやいた。
「はい、こう言った場面では敬遠をすることも少なくないとマサカツさんも言っていました」
「卑怯だけど・・・ルール上ありなんだよなぁ・・・」
ヤヒスは悔しい顔をしている。
フィスが打たなければ後に続く打者に期待はできない。
「フフフ・・・そうくるかぁーー・・・」
フィスは楽しそうである。
「あっ、また敬遠の体勢だよ!」
「くっそ!チャンスなのによぅ!」
ピッチャーが軽く投げてきた球をフィスは見切り、バットを投げた。
回転したバットの良い位置にあたり、観客前まで飛ぶ打球。
「うそぉ・・・」
「どうなってんだ・・・ルール上アリなのか?」
ヤヒスとイエールは唖然としている。
「バットを投げてボールにあててはいけないと言うルールはないとマサカツさんは言っていました、そもそもそう言うことをする人間がいることを想定していないそうです」
「えぇ・・・」
「そら、そうだな・・・」
ヤヒスとイエールは困惑している
ヴィーシャはその俊足でホームイン、しかしフィスは二塁どまりだ、それでもかなり良くやった方である。
次の打者は受付嬢である
「これで最後だろーーー!!」
「あーあ・・・ダメだなコレ」
双方の観客が声を響かせている。
そのとき受付嬢の頭は放心状態と極めて冷静な頭の中間にあった。
ピッチャーは勝ち急いだからか甘い球を投げた。
受付嬢の身体は適度な力と腰の柔軟さで回転し、投球をバットの芯でとらえた。
打球は弧を描き観客席入りした。
彼女は焦点の定まらない目でホームに帰ってきた。
このまま逆転なるかと双方に緊張が走る中、パムは三球三振した。
同点、引き分けである。




