197 白球②
野球回です
マサカツの一言でソヴィリバーレ王国とドルガン王国の野球対決が行われることになった。
まず道具作りから始まり、それぞれの国で野球用の用地が開拓された。
それぞれ両国でマサカツが一週間づつルール等の説明とトレーニングを行った。
その後は一か月の自主練である
まずピッチャーだがその高身長とバネの良さでリャヒが選ばれた。
打順については、細かい調整など理解できるはずもないので、各々好きな打順を決めて言った。
フィスは一番最初が良いからと一番を選択し、ヤヒスは良くわからないうちに4番になっていた。
「走らんかいオラー!!」
イエールがバットを握りしめて怒号を飛ばしている、意外なことにルールや細かい戦術を一番早く理解したのは彼であった。
フィスはストライクゾーンが狭いためピッチャーは投げにくい選手となっている。
中継や盗塁などようやく形になってきたところで、試合の日が訪れた。
球場はソヴィリバーレの球場を使用することになったが、想像以上の見物人が押しかけてざわざわとした空気にヤヒス達は気おされ気味だった。
「うーーなんか緊張してきたな・・・」
イエールがそわそわしている。
「俺はもう無の境地だよ棒切れ振っていれば終わる・・・」
ヤヒスは目を閉じている。
やがて選手同士が向かい合う場面で、双方の選手差が明らかになった。
ソヴィリバーレは運動をしたこともなかったようなギルド長に受付嬢、さらに女性が半数であるが、ドルガン帝国は屈強な男で固められており、早くも試合の行方が見えているような気がした。
じゃんけんで先攻後攻が決められ、ソヴィリバーレが後行となった。
リャヒがマウンドに立ち、ボールを投げていくが、初めての野球でのバッターボックス入りとあり、あっさりと三振3つの無得点となった。
返ってソヴィリバーレの攻撃。
「フスス、華麗に決めてくるわい」
フィスがバッターボックスに立つとさっそくヤジが飛んだ。
「おい!何でガキが出てるんだよ!」
「ちんちくりんは帰れ!!」
などとからかわれている
「おうおうおう、野球じゃなくて拳できめてもいんだぞオラー!!」
怒ったフィスを審判のマサカツが止めている。
そして注目の第一級目である。
屈強な男が高い位置からボールを投げてくるが、そもそも素人の練習不足なので球速は早くない。
「ボールが丸見えだわ、い!!」
フィスは腰をきれいに回転させ、バットは初球を捕らえた。
ボールは観客席までとび、ピッチャーは呆然としている、そのまにフィスはベースをすべてまわり切りホームイン、チーム全員に迎えられた。
「いいぞぉちびぃ!!」
「これホームランだろ?!やるじゃねぇかちんちくりん!!」
誉め言葉なのか罵倒なのかわからない声が響いている。
試合は始まったばかりだ。




