2 スキル
村を出て三日目、野宿にも段々慣れてきた。
田舎育ちだから、山菜や木の実など見分けることが出来るので食料にはそれほど困らなかった。
王都に近づいているためか馬車も時折見かける。
「馬車を使えば楽なんだろうけど、出稼ぎの身分じゃ路銀がなぁ」
出稼ぎに出る者は僅かな食費と王都での2-3日分にあたる宿泊費しか与えられない。
「王都に到着したら早く仕事を見つけないといけないな」ブツブツとこぼしながら歩いていく。
食料がちょうど尽きかけた頃に王都が見えてきた。
城壁の外にも出店が出ており、王都のガイドが大声で呼びかけている。
「お兄ちゃんガイドいらないかい」どう見ても田舎者の彼は格好の餌食なのだろう。
「いや、出稼ぎだからお金が」そう言いかけると「チッ、出稼ぎもんか」とすぐに離れて行った。
(しかし大きな門だな、街の中も大きいんだろうな)
そう思っていると声をかけられた。
「お前、滞在証はあるか」鎧や槍を身に付けた衛兵だ。
「はっはい、これを」と衛兵に滞在証を差し出す。
「うん、魔力には反応している、本物だな、しかしビソル村から来たのか、出稼ぎか?」
「はい、仕事を探すのにはどうすればいいでしょうか」
「職業安定所だな、お前はスキル持ちか?」
「はいそうです」
「なら冒険者ギルドでも良いかもな」
衛兵はそう言って滞在証を返して来た。
王都はにぎやかだ、見たこともない果実や料理がならび、宝石もあり見事なものだ。
そうこうしているうちに、冒険者ギルドの場所を聞くことを忘れていたことに気が付いた。
出店の男に場所を聞くと丁寧に教えてくれた。
「冒険者希望かい?がんばんなよ」と励ましてもくれる。
心が軽くなりギルドへ急いだ。
ギルドは二階建ての堅牢な見た目をした建物で、入口に星のようなマークの看板がぶら下がっている。
重い扉を開けて中に入るとテーブルがいくつかあり、それぞれ様々な恰好をした人々が座っており、何か相談事や談笑にふけっている様子だった。
隅の方に「受付」と書かれた看板が下がっているので、そこに向かいカウンターに顔を出す。
「クエストですか、報酬ですか、あらご新規さんかしら」
受付嬢は優しく微笑んでくる。
「あっ、新規です」そう答えると用紙と金属製のプレートをカウンターに置いた。
「名前と出身地を記入してください、それとスキルがあれば記入をお願いします」
そう言われてすべて記入して渡すと、受付嬢がくぐもった顔をした。
「結合?のスキルでよろしいんですか」
「はい、結合です」
「聞いたことないですね、ちょっと調べてみます」
彼女はカウンターの下から手引書のような物を出し、調べ始めた。
「やはり記載されていません、と言うことはレアスキルですね」と受付嬢は笑顔になった。
「レアスキルだって、どんなのなんだよ」
大柄な男が後ろに立っていた、他にもこちらを見ている者がおり、注目されているのを感じた。
「どんなって、破損したものをくっつけるスキルです」
ヤヒスがそう言うと、その場にいた全員が笑い出した。
「くっつける?がはははははは、なんだそりゃレアって聞こえたから来てみたらカススキルかよ!!」
ヤヒスはムッとして言った「村では破損した鍬やナイフを結合していました!」
「はははは、田舎と王都じゃ別なんだよ、それに修理ってスキルがあって剣や防具は直しちまえるのさ、修理持ちは少ないから人気商売だが、くっつけるだけのスキルが役に立つのかね」
ヤヒスは屈辱と憔悴の入り混じった気分でその場に立ち尽くしていた。