190 高価な腕輪
ドルガン王国に来た黄昏パーティーはマサカツを鍛冶屋に残して各々が町へ散っていった。
(ウチのパーティーは攻撃力は高いけれど防御力は低いんだよな、全員素早さ重視だから防具も簡易的なものだし・・・なにか効果的なアイテムは無いかな)
ヤヒスは出店をみていろいろ情報を集めてまわったが、防御力が上がるのは鎧自体であり、軽装鎧を装備している自分たちは、あまり恩恵を受けられそうもなく、追加される数値もおおむね5%と言ったところだ。
「兄ちゃんの探しているようなものは出店ではたぶんほとんど無いだろうな、高級志向の路面店を探してみな」
そう言われてヤヒスは悩んでいたが、先の国からのクエストで懐事情も良いため思い切って路面店に入ってみることにした。
しかしやはり高価な物ばかりで、武器や防具が少し性能を向上するだけのものだった。
それならば、ヤヒスの結合スキルと魔石でどうにでもなることである。
何店舗かまわり、あきらめかけたときある店の店員に事情を話すと、腕輪を出してきた。
「これは一回だけ致命傷を防ぐ腕輪です、致命傷を受けた場合腕輪は破損して2度と使えなくなりますが」
ヤヒスはその腕輪に非常に興味を惹かれ、店員に値段を聞いてみた。
「こちらは50万ゴールドになります」
(やはり高価だな・・・だが値段の割には得られるものが大きい気がするぞ)
「この商品はしばらくまえに2個だけ入荷したものですが、先ほどお客様と同じような要望でお求めになった方がいますのでこれが最後の1つです、再入荷のめどはたっていません」
(さすが商売人だ、うまいこと言うなぁ・・・この話が本当かどうかも分からないのに欲しくなってきた)
ヤヒスは思い切って50万ゴールドをカウンターに出して、腕輪の購入を申し出た。
店員はてきぱきと作業をこなし、腕輪を装飾が施された木箱に入れている。
ヤヒスは紙袋に商品を入れてもらい、路面店をあとにする。
(まぁダンジョン発見の報酬があるから、金額的には痛くないんだけど、根が貧乏性だからすごい思い切った気分になるな・・・)
やがて宿に戻り、共有スペースで何か収穫があったかの話し合いになった。
マサカツは工作機械が思いのほか高度なことや、自分が書いた図面が早々に理解されたことを興奮気味に話していた。
その後ヤヒスが紙袋から木箱を出してヴィーシャに前に置いた。
「これ、一回だけ致命傷を防ぐ腕輪だよ、前衛として付けていて欲しい」
そう言ったヤヒスを見て、ヴィーシャは照れくさそうに笑った。
その後でヴィーシャは同じように木箱を取りだしてヤヒスの前に置く。
「開けてごらんなさい」
そう言われて箱を開けると自分がおくったものと同じ致命傷を防ぐ腕輪が入っていた。
「あ・・・ヴィーシャ・・・こんな高価な物を」
「あなただってそうじゃないの」
彼女はクスクスと笑う。
「ほーう・・・お互い大金を払って同じものを送りあう夫婦、我が国に伝わる寓話となじだな」
「あら、夫婦ですって」ミードリが面白そうにいった。
ヤヒスとヴィーシャは顔を赤くしてうつむいてしまった。




