168 神の後任
「僕は神の後任です」
若い男がそう言うとフィスが椅子から飛び上がり男の顔面に思い切り蹴りを入れた、神を名乗る男は玄関から路地に叩きだされ、壁にぶつかり失神してしまった。
「おう?何じゃ?手ごたえが無さ過ぎる、やられたふりではない、ただの人間程度の強さだ」
フィスが拍子抜けしている。
ヤヒスはその男を担ぎ上げホームのソファーに寝かした。
「パム、ヒールを」
パムの魔法で男の傷は回復し、すぐに目を覚ました。
「いやぁ、覚悟はしていましたが手厚いお出迎えで恐縮です」
神を名乗る者は笑顔でソファーに座りなおした。
「冗談ならやめた方が良いわよ、こっちはまだピリピリしているんだから」
ヴィーシャが睨みつけている。
「いえ、本当に先の神の後任でして、彼はやり過ぎたと判断され、神となる者には大幅な能力制限がかされ、検討の上で僕が選ばれました」
「また町を壊すつもりであるか?」
リャヒが見つめている。
「そこです、そう言った行為は一切封印されました、災害への対応は申請の上でしか使えません、あとは上層部への報告ほどしかできることが無いのです、家も金銭も無いのです、平民かそれ以下ですね」
「図々しいの、お前はあの神の後任でありながら我々のホームに住まうつもりだろう」
フィスがそう言うと男は黙って下を向いた。
「えぇ・・・」
ヤヒスが少し引いている。
「どう判断したら良いでしょうか・・・」
ミードリはおろおろしている。
「多分本物の神ね、そうでなければいたずらや何かでこんなことを思いつくはずがないもの、フィスが一般人と同じと言っているけど、何でも組織だって神を派遣しているのでしょう?前任がやらかして後任は大幅に力を制限されるのは良くある話よ」
「ご理解が早くて助かります、何もない状況で放逐され、神を倒し、神に面識があるあなた達しか頼るすべはないのです」
男は頭を深くさげた。
「この家に置かして欲しいってのが望みなのよね?」
「はい、そうなります」
「ヤヒス、ここはあなたの家よ、決めるなら」
「うん、いいよ」
ヤヒスはあっけらかんと言い放った。
「あなたねぇ、少しは考えたらどうなの?」
ヴィーシャが髪をたくし上げた。
「考えたうえでだよ、神を監視下に置けるじゃない、これほど最適なことは無いよ」
全員が「あ」と言う表情になる。
「まずは君の名前を教えて欲しいかな」
とヤヒスが笑顔で言った。
「僕は・・・正勝だよ」
パーティーホームに新しい住人が転がり込んできた、この先どうなるかは誰にも予想がつかない。




