17 剥離
自分のスキルに何が起こったのか調べるためにヤヒスは冒険者ギルドへ向かった。
ギルドにたむろしている連中が手をあげて挨拶してくる。
その中の一人、イエールが話し掛けてきた。
「よぉヤヒス、パーティーに入ったんだってな」
「そうだよ、黄昏ってパーティー」
「あぁ、あの女だけの駆け出しパーティーか、いいねぇ、ま、がんばれよ!」
そう言ってイエールは去って行った。
ヤヒスはそのままカウンターへむかう。
「あ、ヤヒスさん、今日はどのような御用で」
受付嬢が笑顔を向けてくる。
「自分のスキルを再確認したいんです」
「再確認ですか、良いですよ」
そう言って厚手の本を出してきた。
「これはスキル鑑定書、手をかざすとページに取得しているスキルが表示されます」
そう言われてヤヒスは鑑定書に手をかざす。
しばらくしたら文字が浮かび上がってきた。
「まず、接合スキル、これは青色が付いていますね、スキルレベルが上がっている証拠です、あら、もう一つスキルが追加されていますね、これは・・・剥離ですね、聞いたことが無いスキルです」
そう言って本を出してきた。
「うーん、過去に2例が確認されていますが詳細は不明ですね、でもこれもレアスキルになります、結合と剥離は逆の意味ですよね、スキルは基礎スキルに沿ったスキルが追加されるのですが、たまに逆のスキルが出現することがあります、これは乖離スキルと言います」
「それは良い傾向なんですか?」
「それがそうでもなくて、例えば火のスキルの人が乖離スキルで、水のスキルを取得したとします、こうなると自身のスキル傾向に沿わないのでその、邪魔になってしまいますね」
「そうですか、うーん、運がないなぁ」
「色々試してみると良いかもしれませんよ」
受付嬢はそう言うと笑顔を向けてきた。
ギルドを出て裏門から外に出て丘の方へ歩いていく。
そこには大樹がそびえたっている。
ヤヒスはその大樹に向けて声を出した。
「剥離」
その次の瞬間、大樹の肌と葉が全てはじけ飛んでしまった。
ヤヒスは呆然としている。
「剥離って・・・そう言う・・・」
剥離のスキルは文字通り大樹の皮を剥離したのだ。
「ああ、木が、どうしようどうしよう」
ヤヒスはおろおろしている。
「そうだ、結合があるじゃないか!」
そう思いついたヤヒスは「結合」と叫んだ。
大樹の皮と葉が元に戻っていく。
「そうか!接合と剥離は乖離しているんじゃなくて対になったスキルなんだ!」
自分の両手を見つめて思う。
(女神さまが授けてくださったのはこの剥離だったんだろうか)
ヤヒスは下水道で女神像を接合した時のことを思い出していた。