158 神①
平穏な朝にそれは起こった。
天空にシルクハットをかぶり、黒いスーツを身にまといステッキを持った人影が出現したのだ。
ソヴィリバーレ中の住人が空を見上げ王宮も大騒ぎになっている。
しばらくすると騒ぎは収まり、多くの人が天空を見つめ、声を出せずにいた。
「皆さんの騒ぎが収まるまでに長く時間がかかりました、私はとてもがっかりしています」
その人影は町中もれなく響く声で話した。
「私はあなた方の言うところの神です、何千年とあなたたちを静かに見守り続けていました、私の責務だからです、しかし時間が長すぎました、正直なところ飽きています、そこで私はこの世界を面白くしようと考えたのです」
「なんなの・・・?神?」
ヴィーシャが空を見上げて言った。
黄昏パーティーは全員空を見上げている。
「みなさん、面白くとは何か?と思っていますね?それはこう言うことです」
彼はステッキを軽く振ると王宮の半分が爆発して消し飛んだ。
町中大恐慌で、悲鳴や走り出す音が混じり耳をひねり上げる。
黄昏パーティーはそれでも慌てることなく、空中の男を見上げている。
「次は何をするかのう・・・お前ら逃げんで良いのか?」
フィスは透明な声を出した。
「どこにいても同じだよ、あれは自称神の狂いだが力は本物みたいだからね」
ヤヒスが静かに答える。
その間にもドルガン王国やワハイの町などを爆破させている。
「!!!バルドルド!!おっちゃん!!」
さっきまで冷静さを保とうとしていたヤヒスが大声を上げて空を見上げた。
「ふむ・・・田舎も平等に扱わねばなりませんね」
男がそう言うと農村地帯が映し出された。
「おい・・・俺の村の近くだ・・・やめろぉ!!」
農村地帯は爆裂して土煙で覆われた。
ヤヒスは膝をついて蒼白の顔をしている。
もはや誰も声をあげることが出来なかった。
「最近発展してきた北の土地もまた元に戻しましょう」
空にはリャヒの王国が映し出された。
「なっ!!?貴様やめろ!!!!」
リャヒの叫びと共に村落が爆発して煙のように家屋が吹き飛んでいる。
「あ、ああああああああ!!!」
リャヒは叫び声をあげて尻もちをついた。
その場にはヤヒスとリャヒのうめき声がこだましている。
ヴィーシャは大粒の涙をこぼすままにして天空の男をにらみつけている。
「許せない、神だか何だか知らないけれど絶対に許しては置かないわ」
フィスは奥歯をかみしめてギリギリとした音を出し地面を見つめている。
ミードリは膝をついて涙を流している。
パムは座り込んだまま空を見上げ、瞳孔が開くかと思うほどの目つきで男を睨みつけている。
ヤヒスはよろよろと立ち上がると空中の男を座った目でとらえていた。




