154 意匠
まだ少なくない数の未発見遺跡があることを想定したヤヒス達は、文献やボロ市などで、そのとっかかりを探す日々が続いた。
「お、兄ちゃんまた来たのか?」
ヤヒスはボロ屋の親父の前にかがみ込んでいた。
「うん、ちょっと気になる物をここで見かけたからね」
「おうおう、どれだね」
「えーと・・・どれだっけ?これだ」
そう言ってヤヒスは鞄から金属で出来た何かを取りだした。
「やっぱりだ、この意匠よく似ている」
ヤヒスが2つの品物を見比べているのを見て店の親父が覗き込んできた。
「なんだ、同じ意匠の品物を探していたのか、しかし何のために?いや、こんなところにくる奴は妙な趣味の1つや2つ持っているもんだからな」
ヤヒスはボロ屋で石でできた板を購入してホームに帰った。
ホームではミードリがダイニングテーブルに地図を何枚か広げて本と照らし合わせている。
熱中しているためにヤヒスの帰宅には気付いていない。
彼はミードリの肩を軽くたたくと、彼女はハッとした様子で振り返った。
「ヤヒスさんおかえりなさい、成果はどうでしたか?」
「先日見つけた妙な金属と似たような意匠をつけた、用途のわからない石の板を見つけたよ。
「見せてもらって良いですか?」
「うん」
「これは・・・確かにほぼ同じ意匠ですね」
「何かのアイテムだと思うんだけども・・・なんて言うのかつまり、今の時代まで少なからず残っているような規模の文明が、あったあかしと言うことかなと思うんだ」
それを聞いてミードリは地図を何枚かめくりレンズで何かを見つけようとしている。
「これ、同じ意匠じゃないですか?」
ミードリは顔をヤヒスの方に向けて問いかけてきた。
「・・・本当だ中央の大森林の辺りに意匠が書いてある、ん?でも大森林の絵図が描いてないね」
「おそらく描いてないのではなく、無いから描いていないのだと思います、つまりその頃大森林は無かった」
ミードリは地図を3枚並べて意匠の書いてある位置を比べている。
「この時代では森林は描き込まれていません、次にこの地図を見ると中規模程度の森林が描き込まれています、最後に現代、大森林と書き込まれ、絵図の面積がかなり大きくなっています」
「つまり古代の都市が何らかの理由で放棄され、徐々に森林にうずもれていき今では見えなくなり、誰もその都市のことを覚えていない、と」
ミードリは大きくうなづいた。




