15 ビソル村
ヤヒスたちはミドルビーと戦っていた。
巣はミードリの火炎魔法ですぐ焼き潰せたが、打ち漏らしたミドルビーが襲い掛かってきたのだ。
苦戦している。
そのうちミードリが刺されて毒状態に陥った。
パムがすぐに解毒のスキルを使い回復させる。
ミードリは今までよりも大きな火炎を放つ。
これで大半のミドルビーが倒され、残りはヴィーシャが片を付けた。
ヤヒスは魔石拾いに忙しい。
「苦戦しちゃったわね」
ヴィーシャが疲れた様子で声を出す。
「クエストを受ける人が少ないのもうなづけます」
ミードリーは遠くを見ながら言った。
「ビソル村まではあとどのくらいかかる?」パムが馬車に乗りながら聞いてくる。
「馬車なら明日の朝には到着するよ」
「それならもうすぐね、今日はもう少し行って野宿をして早く寝ちゃいましょう」
ヴィーシャがそう言うので、しばらく進んだところにあった大木の下で野宿した。
「おい、起きろ、村までもうすぐだぞ」ヤヒスは他の3人に声をかける。
「村に帰ったら食事が出ると思うから、朝食はそれまで我慢してくれよな」
全員が馬車に乗り出発する。
「ここらはえらく揺れるわね」ヴィーシャがへきえきした顔をする。
「馬車はあまり来ないから道が荒れているんだよ」
「村が見えてきた」とパムが声を出す。
「ああ、ビソル村だ、もうすぐだぞ」
ヤヒスは馬車を走らせた。
村に着くと大騒ぎになった、みんな笑顔で出迎えてくれる。
喜びで泣いている老人もいる。
「みんなただいま」
村長がヤヒスを出迎える。
「一億ゴールドもの考えられない大金、良くぞやってくれた」
村長はヤヒスの肩を叩きながらうなづいている。
「お兄ちゃんおかえり」妹のシュルレが抱き着いて来る。
母親も笑顔で出迎えてくれる。
「そうだ、紹介が遅れたね、この人たちは俺が入っている冒険者パーティーの三人、ヴィーシャ、ミードリ、パムだよ」
「冒険者をやっておるのか、悠々自適に暮らせる金があるだろう」村長が言う。
「動いていないと落ち着かないんだ、それに冒険者は色々な人を助けることが出来るから」
「うむ、良い心がけじゃ、王都でも立派に励んでくれよ」
「もちろんさ」
夜になると宴が催された、酒に酔い、美味いものを食べダンスを踊る。
幸福な時間。
ヤヒスは酔った村の若者に絡まれていた。
「なぁなぁどの娘が好きなんだ」
「女の子三人っていい身分だよなぁ、みんなかわいいしよ」
「俺はミードリちゃんがいいな」
などとパーティーメンバーのことを聞かれている
「まだ会って日が浅いしそう言うのはないよ、仕事仲間って感じだし」
(へたなことを言うとまたイジられるな)
そう考えてその場を抜け出した。
「やあ、みんな、楽しんでる?」
ヤヒスがパーティーメンバーに問いかけると、答えが返ってきた。
「男がもう何人も声かけて来て最悪、せっかく美味しい料理も台無しだわ」
ヴィーシャはほおづえをついて答える。
「じゃあもう寝るかい、村の集会場にベッドが用意してあるから案内するよ」
「そうする」とパムが立ち上がる。
四人は集会場に向けて歩き出した。
「粗末なもんだけど」
ヤヒスが申し訳なさそうに言う。
「上等よ、野宿より数百倍いいわ、ありがとね」
ヴィーシャはそう言って笑った。