144 コスタカン①
南方の砂漠地帯にあるコスタカン遺跡の存在を確認するため、ヤヒス達はチヌックで南下していた。
「うーん・・・地図の辺りに来てみたけど砂漠が広がっているばかりね」
ヴィーシャが辟易したような声を出す
「遺跡の一部でも露出しているかと思ったのですが、それほど甘いものではなかったですね」
ミードリはがっかりしながらチヌックの上で砂漠を見ている。
「チヌック、君の目でもそれらしいものは見えないかい?」
「は、岩塊などは見えるのですが、人工物はほとんど見えません」
低く飛んで地面を見回したり、歩いて細かく見渡したりしていたが、夕暮れが近くなり、野宿をするために全員が砂漠に降り立った。
「まぁ食料は沢山持ってきたから良いだけ食べてもいいよ」
麦と野菜のスープを調理しながらヤヒスは誰にともなく言った。
「ま、行き詰った時は飯が一番だて、脳に栄養が回るし疲れも取れる」
フィスはスープをカツカツと食べながらひとりごちていた。
しばらくするとパムが一つの方向を見て動かなくなった。
「どうしたんですか?」
ミードリが彼女に話し掛けると、パムは指さしながら答えた。
「あそこ、光ってる」
「え?なに?」
ヴィーシャがその方向を見るとそこには灯りがともっていた。
「なんぞ、別の旅人が野営しておるんだろう」
フィスは食事に気を取られている。
「いや、この辺りはくまなく見て周ったが、人気は無かった、砂漠の外からここまで来るのも時間的に不可能だ」ヤヒスの言葉にヴィーシャが合わせてきた。
「・・・食事を急いで済ませて、そしたらあの灯りを追うわよ」
「なるほどそうか、遺跡の自動点灯か」
フィスが食器を片付けながら独り言を言った。
「チヌックは夜でも飛べるの?鳥は夜目が効かないんじゃないの」
ヴィーシャの疑問にヤヒスが答える。
「それは俗説で、夜間でも良好な視界を得られるし、人間よりも10倍ほど夜目が効くんだ、なぁチヌック」
「は、我が主、おっしゃる通りです、お任せください。
全員がチヌックの背に乗ると、鷹は飛び立ち、明かりの方へ一路、飛行を続けた。
「もう少しです、我が主」
「うん、」
ヤヒスとチヌックがやり取りをしている間も、光は近付いて来ていた。
そのうち、チヌックが地に降り立つと、岩塊の隙間から大きく光が漏れているのを見つけた。
「これじゃあ見つからないわけね、パム、ライトボールを出して」
ヴィーシャがそう言うとパムは光る球を出して辺りを照らした。
「ううっくっ・・・」
ヤヒスが岩塊の一部を引き剥がしにかかると、それは少しづつ剥がれていき、岩塊は崩れるように剥がれ落ちた。




