143 与太話の本
リャヒが自国の内政に取り組んでおり、黄昏パーティーを一時的に抜けた状態での日々が続きていた。
「つまらんの、からかう相手がおらんのも寂しいもんだな」
フィスが椅子を斜めにしながらぽつりとつぶやいた。
「仕方ないですね、元々王なのですから今までうちのパーティーにいたのが不思議なぐらいです」
ミードリが本を読みながら言った。
「それもそうだけど、ダンジョンもだいたい回っているし季節に合わせて観光するぐらいしかやることが無いわ」
「・・・もう少し編成を変えてダンジョンに挑むのはどうかな」
パムの話しにミードリが意見を出してきた。
「この本なのですが、記憶から消えた都市と遺跡たち、と言うタイトルでして、ほとんどおとぎ話めいた与太話本なのですが、別の本と照らし合わせてみると確かに存在していたか、現在も存在している可能性のある都市が浮かび上がってくるのです」
ミードリは本のページをなぞりながら話をすすめていった。
「その遺跡だとか都市を探っていくと言うことになるの?」
ヤヒスが腕を組んでミードリに投げかけた。
「そうなります、一番可能性が高いのが以前訪れた南方の砂漠ですね、サンドマンが遺跡に居座っていたことからも、他にも遺跡がある可能性がありまして、名前をコスタカンと言います」
「コスタカン・・・聞いたことも無いわね」
ヴィーシャが腕組みをして地図を眺めている。
「この古地図、比較的新しい物ですが、砂漠地帯にはサンドマンがいた遺跡しか記されていません、ですがより古い物になるとここに比較的大きな絵図があり、コスタカンとされています」
「ふーむ、面白いのう、人々の記憶から消えたのか、都市そのものが砂で埋もれたのか」
フィスは地図をのぞき込んでいる。
「その両方なんじゃないかな、しかし行ったら何があるのかな」
ヤヒスがそう言うと、ヴィーシャがそれに声を返した。
「何かがあるか、何もないのか、何もないならそれだけだってことよ、冒険者はそもそもそう言った意味合いが強い職業なのよ、面白くなってきたわね」
「じゃあ、明日にでも出発だね」パムがヴィーシャを見つめて言った。
「面白そうじゃない、行ってみるしかないわね」
「そう言うと思って、何枚か古地図を購入してあります」
「話がはやいのう」
フィスは頬杖をついて言った。




