141 謀反③
プルツ国の大臣が謀反を起こし、それを鎮めるためにヤヒス達のパーティーは城内を登りつめ、リャヒは体躯の大きなオークと戦うことになっていた。
オークは大きな斧を振り回し、リャヒを仕留めようとするが、冒険者生活で鍛えられた彼の体捌きに翻弄される形となっていた、しかし双方とも決め手となる一撃を繰り出せないまま小康状態になっていた。
ずいぶんと時間が経過していることをはた目から見ているヤヒス達は良く知っていた、だが戦闘を行っているリャヒ自身はどのくらい経過しているのかおぼろげであった。
「まずいわね、リャヒの体力が落ちているわ」
ヴィーシャは腕を組み、二の腕を指で叩きながら言った。
「どうしましょう・・・」
ミードリがヴィーシャに話し掛けている。
「どうもこうも無いわ、彼が自力で勝利するしかないのよ」
そう言った会話をしていた時にオークが大きく踏み出して、斧を振るってきた。
リャヒはとっさに槍で防いだが、敵の突進力に負けて槍が折れ、そのまま壁際まで吹き飛ばされた。
「・・・ッ」
リャヒが声にならない声を出す、彼がよろよろと立ち上がろうとしたとき、右手に何かがふれた。
「・・・」
ヴィーシャは何かに気付いたようで目を細めている。
「こ、これは、御爺様の槍・・・まだ勝機はある、御爺様!!お借りしますぞ!!」
リャヒが槍を構えて一歩踏み出した時にそれは起こった。
リャヒの身体が光り輝きその場にいるもの全ての目をくらませた。
「こ、これは・・・力がみなぎって来る・・・疲労もウソのように消えた」
光が収まったその時、リャヒは瞬歩の速さで間合いを詰め、オークの肩に槍を突き立て、ぐるりと捻じった後素早く槍を抜き、バックステップでまた距離をあけた。
オークは斧を取り落とし、膝をついてうめき声をあげている。
「それまでよ!!勝敗は決したわ!どちらが勝者かは見ればわかるわね!?」
ヴィーシャが叫び声を上げると、リャヒは中腰の体勢から立ち上がった。
「さて大臣よ、次はお前が我と戦うか?それともその椅子を降りるか?」
大臣は椅子からズリ落ちてその体勢からリャヒにひれ伏した。
「だれかある!!」
リャヒが叫ぶと数人の衛兵が駆け出してきた。
「大臣を幽閉しろ、またあとで聞きたいことが少なからずあるからな」
衛兵は大臣を連れてどこかへ消え、階下から別の衛兵が駆け上がってきた。
「王よ、此度は我らの恥ずべき行いには断罪を持って処してください」
兵たちは自ら処罰を受けることを望んだ。




