135 一秒時計
ワハイの町でバカンスを楽しんだヤヒスたちはソビリバーレに戻り、ホームで荷ほどきなどをしていた。
「ッー砂だらけね、掃除しなきゃ」
「海とはこんなに砂が付くものなのか、驚きだのう」
ヴィーシャとフィスは玄関から出て荷物を払ったりほうきで掃いたりしている。
そこに全員加わり大掃除になっていった。
「うむ、掃除にも慣れてきたぞ」
「最初掃除ばかりでしたからね」
リヒャとミードリはモップをかけている。
その間にヤヒスは市場に買い出しに行っていた。
魚類はたらふく食べていたので、今度は肉かと思い鶏肉を仕入れ、香草や調味料の類もみつくろう。
一通りの買い物が済んだので、今度はボロ市に足を延ばした。
相変わらず何に使うのか分からないような物や、一見して一級品に見えるまがい物などまさにごちゃ混ぜの状態である。
(あいかわらずむちゃくちゃだなぁ、でももしかしたら値打ち物があるかと思うとちょくちょく来ちゃうんだよねぇ)
色々と流し見しながら歩いているとある物品が目にとまった。
(一秒時計って書いてあるけれど何のことだろう)
そう思ってまじまじと眺めていると店のオヤジが声をかけてきた。
「気になるかい兄ちゃん、この一秒時計が?」
「ええ、まぁ、どういう意味か分からなくて」
「その名の通り一秒先の未来へ行ける代物よ」
「一秒先に行ってどうするのさ第一その時計を操作したとして、もう一秒立っているから意味ないじゃないか」
「はははっその通りなんだ、実際に一秒経過しているのかも確認できない、だから売れないんだ」
(うーん・・・ミードリに聞けば何かわかるかなぁ・・・胡散臭いけど何か興味がわくんだよな)
そう思ってヤヒスがかがみ込んだとき胸に下げていた金属板がチャラリと音を立てた。
「おめぇそれヘキサの欠片じゃないか、バルドルドのよ」
「知っているの?」
「ああともさ、ドルガンに出かけていた時スリにあってよぉ、困っていたところをバルドルドとその仲間に助けてもらったのさ、うん、それなら話は別だ、コレもってけ」
「いいのかい?」
「ああ、ヘキサの欠片持ちなら話は別だ」
「おっちゃんありがとう!」
「なぁに、どうせ売れやせんものだからな」
ヤヒスはボロ市を後にしてホームに戻った。
「と言うわけでこの時計をもらったんだ」
「なによ、うさんくさい、とりあえず押してみるわよ」
ヴィーシャが時計のスイッチを押すとカチリと言う音がした。
「なにも起こらないね」
パムが時計を見ている。
「ふむ、ガラクタだのう」
リャヒはため息をついた。
「はははは、マスターはだまされたというわけだな」
「まぁタダだったからいいけどさ・・・」
ヤヒスは一秒時計をポーチにしまった。




