133 大海戦
「・・・釣れぬのう」
「・・・釣れないねぇ」
ヤヒスとリャヒは朝から釣りをしていたが一匹も魚がかかっていなかった。
「のう、そろそろ浜に戻ってもいいころじゃな・・・うわ!浜が遠いぞ!」
「えっ?うわぁホントだ!あんな遠くにある!」
「どうするのだ、このオールで戻るのか?」
「チヌックがいるからグリフォン形態で船ごと運んでもらえばいいよ」
「なるほどそうか」
そう言った会話が終わった後船が大きくかしいだ。
転覆するか否かと言うところで船べりに白い触手が幾本も絡みついてきた。
「なんだこれ!?なんだこれ!?」
「うわああああ!!」
大騒ぎしているところに巨大な白い物体が浮上してきた。
「・・・!!」
「・・・!!」
「これ昨日食べたイカってヤツだ!!」
「デカいのう・・・」
そこへチヌックがグリフォンの形になり急降下して、巨大イカに火炎を浴びせる。
巨大イカは悶絶し、チヌックに黒い墨を吐きかけてきた。
「ギィイイー!!」
墨がチヌックの目に入り彼は方向を見失っている。
そのうち船が破壊され二人は海に投げ出されてしまった。
「我は泳げないんだ!」
「あばれちゃだめだ、リラックスして!」
その場は大混乱である。
その時突き上げるような衝撃で二人は宙を舞った。
「うわぁ!何だあれ!?黒くてデカいのがイカを食ってるよ!」
「あのイカよりデカいのはなんだ!?」
宙に放り投げられた二人を、聴覚を駆使して察知したチヌックが拾い上げて上空に舞い上がっていった。
チヌックを浜の端の方に降ろして、二人はぐったりしたまま浜辺を歩いている。
来る人くる人が皆、二人を見てくる。
「何か視線を感じるのだが」
「うん、見られているねぇ」
そう言って歩いているとヴィーシャ達がいたので声をかける。
「ああ、あなた達魚はつれたの・・・ってうわ!」
「マスターどうしたんだ?」
フィスも目を丸くしている。
「真っ黒だよ二人とも」
そう言われてヤヒスとリャヒは自分の身体を見た。
「うわっ!黒い!」
「本当だこれは黒い!!」
二人はことの経緯を話して聞かせた。
「そーんなのいるわけないじゃん?驚かせようって魂胆でしょう?」
ヴィーシャは信じてはくれない。
「いえ、おそらく本当です、昨日食べたイカと言う生物は緊急時に墨をはく性質もあります、またダイオウイカと言う巨大なイカもたびたび確認されていますね、それとイカを食べたのはおそらくクジラと言う海洋生物でしょう」
「なんでそんなこと知っているの」
パムがミードリに質問した。
「海にくることになって、図書館で海洋生物に関する本を持ってきていましたから」
「はー・・・とにかく身体を洗ってくるよ」
ヤヒスとリャヒは連れだって歩いて行った。
それからすぐに昼食の時間になった。
「今日の昼食はパスタになっております、当地自慢の一品で・・・」
そう言ってウエイターが出してきたのは、真っ黒なパスタだった。
「あの・・・これもしかして」
「イカの墨を・・・」
ヤヒスとリャヒはウエイターに問いただした。
「はい、イカ墨のパスタでございます」
ウェイターは自慢げな顔をして、二人はうなだれて下を向いた。




