132 夜話
海岸やテーブルに魔石が灯され幻想的な風景になっているワハイの夜は、老若男女皆笑顔で過ごしている。
リャヒもその一人であった。
「ん、美味である!」
「うるっさいわねー、静かにしなさいよ」
「美味なるものには賞賛が必要だぞ」
「もっと控えめにって言ってるの!」
リャヒとヴィーシャがなにやら喧々諤々している。
「リャヒの奴め、すっかりなじんでおるのう、あの性格ならほっておけなくなるのもあるしの」
「まがりなりにも王だし育ちは良いし、性格も悪くないんだろうな」
フィスとヤヒスはエビを次々と食べていっている。
「マスターそのエビはワシのじゃ」
「俺の皿にあるのにどうしてそうなるんだよ」
「隙だらけじゃ、んむんむ」
「あっ食べやがった!俺一応マスターなんだぞ!?」
二人のやり取りをよそにパムとミードリは黙々とカニを食べている。
やがてシェフがやってきて挨拶をし、味はどうか、ゆっくりして欲しいなど話して戻って行った。
「うーむヤヒスよ」
「なんだい?」
「これを王都の市場で購入してきて、お前が料理すると言うのはどうなのか?」
「それが王都まで行く前にほとんどの海産物は腐ってしまうんだ、だからこの辺りでしか食べられないんだね、味付けもほとんどせずに焼くだけで美味しいから素晴らしい食材ではあるんだけど」
リャヒは自宅でも食べたいくらいに海鮮料理を気に入ったようだ。
食事が終わった後には風呂に入り、それぞれ寝室に向かった。
ヤヒスとリャヒは男同士、同室である。
ふいにリャヒがヤヒスに対して真剣な目で話をすすめてきた。
「お前のおかげで我は何不足なく暮らし、国も順調に発展しているのだと思う、改めて礼を言おう」
「よしてよ、うちのパーティーや団長とか、皆で相談して決まったから誰の功績ってわけでもないよ」
「ふぅむ、して、正室は誰だ?あのヴィーシャと言う娘か?判断力もあり、芯に強いものを感じるが、あのような者は良い母となり強い子を産むと思うのだが」
「んん?」
「違うのか?では誰が正室なのか、まさかあのちっこいのではあるまいな、気が強くて良い妻となりそうではあるが?」
「んんん?」
「ふん、となると側室は他の三人の誰だ?」
「ち、がーーーう!!冒険者パーティーはそう言うのじゃない、仲間だよ、な・か・ま!!」
「ふうむ、そう言うものか・・・」
「やっぱり君はそういう所は王なんだなと実感するよ」
男子同士の会話はえてしてこのように間の抜けた実の無いようなものである。
ワハイの夜は更けていった。




