130 産業
チヌックの背でリャヒの話を聞いていた一行は想像以上の事柄が進行していることを知った。
「まぁそう言うわけで我は本来人質として宮殿か別荘にでも軟禁される手はずでいた、だがそちらの国がそれをあまり良しとしなくてな」
「それはそうよ、和平を結んだばかりの国から王が来て居座る、何かあったらまた国家間の問題になるわ」
ヴィーシャがあきれた顔で言っている。
「うむ、そこでむしろ民間にくだり、信頼できる護衛をつけてはどうかと・・・まぁそのような内容を提案したら大臣も乗ってきてな、強力な冒険者の元で平穏に暮らしてくれれば良いと、そうなった」
「わははは、面倒ごとをおしつけられたと言うことだのう、お国もずるいことをする」
フィスの笑い声にヤヒスが疑問を抱いた。
「どういうこと?」
「もしこのリャヒさんに何かあれば全ての責任は私たちにあり、とかげのしっぽ切りが出来ると言うことですね」
「良いように使われた」
パムは目を閉じて渋い顔をしている。
「あんたも王宮にいるのなんかつまらないから市民のなかで面白いものを見たいとかそう言う魂胆だったんでしょう?」
「まさしくそうだ」
ヴィーシャの質問にリャヒがあっけらかんと答えた。
「まぁ数日おきぐらいに知らせの物が来て国の現状は理解している、まずお前たちの国から出来るだけ多くの食料を配給してもらってな、それと同時に国を挙げて農地改革をしておる、最初は怖がっていた農業指導者も、我が国の国民も自分たちとさして変わらないと気付き今では和気あいあいと作業しているそうだ」
「ふーん・・・順調じゃない、良いことよ」
ヴィーシャがにこやかに笑う。
「でもアレだのう、自国での産業があればもっと良いのだが、何かないのか」
フィスはあぐらをかいて聞いている。
「ああ、それなんだが、地質調査に来たドルガン王国、先に滞在していた国の調査団がな、希土類の大きな鉱脈があるのを見つけてな、それがどうもドルガン王国でも産出が珍しい鉱物らしくてな・・・、向こうから同盟と貿易の申し出をしてきたらしい」
「希土類・・・それは大きな産業ですよ、下手をすれば金よりも大きな産業になります」
ミードリが驚きの声をあげている
「ほう、そうか、ならば我が国は安泰かもしれんな」
「希土類ってあの、魔道具や高価な魔法機に使われる・・・」
「・・・そうよ、リャヒのヤツ全くその価値に気付いていないけれど」
リャヒは国が安定してきたことに心から安心している様子だった。




