124 リャヒの神
リャヒの服装を平服にするため黄昏パーティー一行は市場を目指していた。
「この辺りが被服の売り場よ」
ヴィーシャが振り向いてリャヒに言った。
「おお、そうか、しかし市が賑わっておるな、良い国の証拠だ、我が国もこうあれば良いと思うのだが」
「しかしさっきから視線を感じるな、女の子が主だけど男も見つめているぞ」
ヤヒスがぽつりとつぶやく。
「リャヒさんは身長が高いからこの辺りでしょうね」
ミードリが店の中に分け入っていく。
「うん、これでよかろう」
リャヒは無造作に服を選ぶ。
「着替える場所は無いのか?」
店員の娘に聞いている。
「はい・・・あの・・・こちらです」
店員に案内されて更衣室に入り着替えたリャヒは、すぐに更衣室から出て来た。
背中までのフード、斬り込みの入った襟首、細めのパンツにベルトを巻き付けた様相である。
「なんでも似合うなぁ、俺じゃこうはいかないもん」
ヤヒスは顔をしかめている。
「似合っているか、それならいい」
「君に似合わない服なんて無いんじゃないの」
「ははは、世辞はよせよせ」
ヤヒスとリャヒは朗らかに会話している。
「女ばかりのパーティーだったからの、気やすく話せる男が入って嬉しいんだろうて、ま、マスターの一番はワシだがの」
フィスはにやにやと笑っている。
「まったくいい気になって、そのマスターの本心はどうかしらね」
ヴィーシャが合いの手を入れてフィスをなだめる。
その後は全員で街を巡った。
リャヒにとっては物珍しいものばかりのようで、見世物や大道芸に見入っている。
「うーむ・・・娯楽と言うやつか、ついぞわが国では見かけたことが無い物だ、取り入れてみれば国民の士気も上がるだろうか」
「お祭りとかも無いの?」
パムが何気なく話し掛ける
「お祭り、とはなんだ?」
「その様子だと無いみたいね、神様に捧げものをしたり踊りを披露したり、とにかく派手に騒ぐ催しよ」
「我々には神はおらんのだ、だからそのような催しもないな」
「無宗教なのね・・・」
ヴィーシャとリャヒが会話しているのを聞いて、ヤヒスが会話に加わった。
「何でも、大事な物や土地を信仰するのはどうかな?東方の国では自然に発生するあらゆるものに神が宿るとされているんだ、例えば巨木や、巨石、きれいな川だとかね」
「面白そうだな、我が国はやせた土地ではあるがひときわ目立つ巨木があるぞ」
「それだけ生命力が強い樹木なんだよ、それを神とあがめて神はその力を民草に分け与えるとか、そんな風にだね」
皆はそのようなよもやま話をしながらホームへ向かって歩いた。




