123 リャヒの生活
「ホウキの使い方もわからないの?」
「うむ、すまん」
「お皿はもっと丁寧に洗いなさい」
「こころえた」
ヴィーシャが雑用を教えているのは北方にある魔物の国にいた長である、つまり魔王と言うことになる。
魔王はその強さで国を支配していたのではなく、強さはそこらの市民程度のもので、それを隠して生きてきたのだ。
「とにかく役に立ってくれればいいわ、無理はさせない、出来ることは増やして行けばいいの」
「うむ、出来ることを増やしていく、政治の面ではそれを得意としてきた、期待してくれていいぞ」
ヴィーシャとリャヒが会話している。
「母親と息子みたいだのう」
「嫁姑みたいにも見えるねぇ」
フィスとヤヒスがひそひそと話をしている。
「ダンジョンはどうするんでしょうかね」
「今まで行ったダンジョンを総ざらいするみたいだよ、多少は戦闘経験を積めば何とかなるかもしれないっていうけど・・・」
ミードリはパムと戦闘面での心配事を話していた。
やがて夕方になり、ヤヒスとミードリがキッチンに立った。
「リャヒが来たからまぁウエルカムディナーってことで奮発したよ、王様だしね、じゃあ食べようか」
各自食事に手を伸ばして行く。
「ヤヒスあなたまた腕を上げたわね」
「東方の調味料のセウユって言うのがえらく万能に使えてねすごくおいしくなるんだよ」
などと会話をしている中でリャヒはおそるおそるスープを口にした。
「美味である!!!!」
リャヒが大声を上げた。
「うるさい・・・」
パムがじっとりとした目をしている。
「こんなに美味なるものを食べたことが無いぞ、国の食事はまずくてな・・・食事は苦痛であったのだ」
リャヒは頭をたれてしおれた様子を見せている。
「そ、そう言ってもらえると嬉しいよ」
ヤヒスがリャヒに声をかける。
リャヒは顔を上げるとガツガツと食事を進めて行く。
「ヤヒスの料理はね、そんじょそこらの店よりおいしいんだから、農家だったから食材の目利きもできるしね」
「農家・・・農業か、その点はこの国から技術指導に入ってもらえる予定でいるが、まぁ、我が国の農業は酷いもので、国民は飢えておってな、その点でも内政に力を入れておったのだが、馬鹿な家臣どもが人間の土地を奪ってまかなおうと言いだしてな、私は止めることが出来ず先の戦になったのだ、すまないことをした」
リャヒは頭をさげた。
「領地だけ奪っても無理だと思うよ、最初の1-2年は何とかなるかもしれないけど、作物は実らず土地をダメにして、すぐ限界が来るさ、農業は魔法じゃないんだ、経験と技術が、あとはカンが必要なこともあるんだ」
「そう言うものか・・・ヤヒス殿はいろいろと出来ることを持っているのだな」
「出来ることは増やせばいいんだよ、さっきヴィーシャが言っていたみたいに」
リャヒはヤヒスに笑顔を見せた。




