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122 魔王の名と強さ

「とにかくウチに来たからには冒険者をやってもらうからね、さっそくヤヒスダンジョンにでも潜ろうかしら」


ヴィーシャが装備を整え、他の者もそれにならって動いていた。


「北門の外におる魔物で試せばよかろう、何事にも順序があろうて」


フィスがそう言うのを聞いてヤヒスが答えた。

「まぁ・・・たしかに、最初は目立たない方が良いかもだしね」


そう言った話の流れで北門の外に全員で移動した。


「懐かしいわね・・・ミドルアントを狩って魔石を結合させて戦っていたわ。

「俺はまだ戦えなかった時だね」


ヴィーシャとヤヒスが会話している。


「ミドルアントが近づいて来るぞい」

フィスがリャヒの肩を叩くと彼はビクンと身体を震わせた。


リャヒはヤヒスのお古であるショートメイスを構えてミドルアントに突撃した。


「やぁああああ」


間の抜けた声である。

メイスは当たらず、アントの攻撃を必死で避けてメイスを出鱈目に振り回している。


全員に妙な空気が流れる中でフィスが跳躍してミドルアントの頭に軽く踵を入れた。


ミドルアントは塵となって消えた。


「・・・もしかしてだけど、リャヒって言うか魔王って戦ったことが無い・・・と言うより弱いの?」

ヴィーシャが目を細めてリャヒを見つめている。


「うむ、戦ったことなどないぞ、見たとおりそこらの市民とかわらぬ強さしかないな」


「「「「えええええええ!!」」」」


フィス以外全員声をあげた。

「クシシシ、やはりそうか、空気でわかっておったわ」


フィスはにまにま笑っている。


「魔王って強さで支配しているのではないの?」

ヤヒスが質問している。


「御爺様まではそうだった、それはもう強かったらしい、だが父上にはその能力は引き継がれなかった」

「世襲制なんだ・・・」


パムが言葉をもらす。


「父上はそれがバレぬようにそれは必至で演技をして、自分が戦う必要が無いよう、内政に力を入れたのだ、だがそのストレスからか早死にしてな、同じく強さを受け継がなかった我も、目立つ場所で力を見せることを避けて、内政に力を入れていた」


「隠していてすまなかった、命にかかわる問題なのでな」

「こっちもはなから偏見や名前ばかりで扱って悪かったわ、みんな、このことは話してはダメよ」


ヴィーシャは鋭く言葉を放った。


「それはそれとして、あなた荷物持ちね」

「ん?まぁなんでもするが?」


ヴィーシャとリャヒが話しているのを見てヤヒスはつぶやいた。

「最初の俺と同じだねぇ・・・」


「はー・・・魔王って言うんだから相当に強いことを想像していたんだけど」

「うーん・・・でも人間の国でも必ずしも王が強いとは限らないし」

ヴィーシャとヤヒスが困惑して話している。


「そもそも我は魔王と名乗ったことは無いぞ」

リャヒは衝撃の事実を述べた。


「えっ、でも・・・魔王軍幹部って名乗っていた魔物もいましたよ」

ミードリも考え込んでいる。

「それは人間にたいして理解しやすいように話をしていただけだ」


「何でも政治と経済が回っておるんだろう?軍がおるのも人間の世界では当たり前のことだ、何ら変わりが無いと言うことだろう」

フィスが頭の後ろで手を組んで椅子を軋らせている。


「その通りだ、おそらく人間の国とそう変わらない、まれに強い個体が生まれるだけで戦闘力は人間のそれとそう変わらないはずだ、むしろ温厚で人間がいつ攻撃を加えてくるか怯えていたくらいだ、そのような国の長が魔王を名乗るわけが無かろう」


全員押し黙ってしまった。

「じゃあ国の名前は?」

ヤヒスがリャヒに問うた。


「プルツ国だ」


「なーんだ・・・ふたを開けてみれば双方のすれ違いじゃない」

「人間は想像する、そして想像はいつの間にか事実と受け止められる」

パムが静かに言った。


「ふぅ、何か疲れたわね。今日はもう寝ましょうかしら」

全員で二階に上がり自分の部屋を決めていく。


「おぉ・・・これだ、これで良いのだ、城の部屋は無駄に広くて、ベッドも大きくてな、何か居心地が悪くてな・・・このくらいの大きさが理想的だったのだ」


「コンパクトな方が落ち着くのは分かりますね」

ミードルが部屋を覗いて言った。


翌朝、朝食を取りながら今後の話をしていた。

「まずリャヒさんの服をどうにかしましょうか、目立ちますし戦闘にも不向きです」

「王の服だもんね・・・浮いちゃうわよ」

ミードリとヴィーシャが服のことで相談している。


「む、我の服装はやはり目立つか、式典などで着る服だからな、もっと平民のような格好で目立たないようにしたい」

「だから後で買いに行こうね」

リャヒとヤヒスがやり取りしている。


「ははっ、服を変えても目立つと思うがなぁ、コイツの面を見ろ、整っている、いわゆる美男子だな、町娘が見ほれるて、がははは」

フィスが面白そうに笑っている。


「確かに・・・」

「そうよね・・・」

「・・・美男子ですね」

「顔がいい」

四人とも気付いていたことに改めて気付いたと言う顔をしている。


「顔?そのような物、内面と比べたら重要ではないぞ」

リャヒが言ったので、ヤヒスが彼の肩を叩いて言った。


「余裕がありますなぁー・・・」

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