120 和平
魔王軍の動向を見るため、ヤヒス達は暇を見つけては北の駐屯地に来ていた。
それに対しては団長は特に何も言わなかった。
ある日ヴィーシャが見張りをしていると北の谷間に旗のようなものを掲げて馬がやってきたのを見つけた。
衛兵に伝えるとすぐに団長の元に走り、団長もまた走ってそこにやってきた。
「団長、あれは何だと思う?」
「白旗・・・使者か?」
その使者と思われる一騎は近くまで寄って下馬し、旗を手にしたまま頭をさげた。
「ソヴィリバーレ王国軍の方であらせられるか」
「そうだ、軍団長だ、魔王軍と思われるが何用でおこし召された」
「和平を結びに」
「和平・・・」
その場にいた全員が驚きの表情を見せた。
「残念だが私は和平をうけいれ、許可する立場にない、5・・・一週間後にここにまたおこし願いたい」
「わかりました、本日の所は戻らせていただこう、一週間後またここに参ります」
使者はそう言うと馬に乗り、また元の方向へと去って行った。
「まさか魔王軍が和平を申し出てくるとはな、しかも流ちょうにしゃべっている」
「ふぅ、私の考えが杞憂で良かったです、ですがこの後どうするんです」
「大臣が出てきて署名ってところだろうな、イスやテーブルなどの様式は提案してきた魔王軍が用意することになるはずだ」
団長とミードリはその後もあれこれ話しあっていた。
一週間後
「では和平の締結を・・・」
双方が握手を交わしている。
拍手が鳴り響き和やかなムードである。
「しかし大臣どの、和平の印に魔王殿を我が国に住まわせるとは大胆なお申し出を、して、いつ頃お目見えいただけるのでしょうか」
「我はここにおります!」
後方の群衆の中から現れいでた魔王は、人間のなりをしており、長髪に整った顔を持つ青年であった。
「あいすまなかった、部下が心配者ばかりで、身分を伏せよと言っておってな、我は和平を提案した側であるゆえ自ら出るべきだと思っておったのだが、名前を言うのが遅くなった我はリャヒと申す」
「あれが魔王?人間そのものじゃない」
「フィスだってそうだろ、人間体をしているんじゃないの」
ヤヒスとヴィーシャはヒソヒソ話をしている。
「ではリャヒ殿には先の戦で勲功を上げた腕利き冒険者と共に行動をしていただきたく思います」
「うむ、我を抑えておくにはそれが一番と言うわけだな」
「いえ、魔王と知って狼藉を働くものから守るためでございます」
「おいちょっと・・・これ」
「いやな予感がするんだけど・・・」
二人が声を出しているところに大臣が説明を始めた。
「と言うことでして冒険者パーティー黄昏の元で生活していただきたい」
「ううっまた面倒なことに」
「なんでそうなるのよ・・・」
ヤヒスとヴィーシャは頭を抱えて目を閉じていた。




