115 西の街道をつぶせ⑤
ドラゴンのフィスが森から現れ、魔王軍は混乱している。
フィスは隙を与えず火炎で根こそぎ魔王軍を焼き尽くし、砦を脚で踏み砕いて行った。
それは僅かな時間だった。
「フィスはそのまま岩壁を崩して街道をつぶして!ミードリは要所要所で、ファイヤスティンガーで街道を爆裂させる!」
ヴィーシャが叫ぶ。
フィス以外の人員はチヌックに乗り、ミードリが魔法で転々と街道を破壊している。
「魔力が少ないです!交代を!」
「了解!」
ヴィーシャは大剣を抜くと横凪にして岩壁を崩している。
この作戦で街道は使い物にならなくなるだろう。
「っは!ヤヒス!交代!」
ミードリは膝をついた。
「おう!」
ヤヒスは剥離で岩壁を崩して、街道を埋もれさせている。
「はっはっ!交代!」
ミードリがファイヤスティンガーで転々と街道を破壊していく。
「私は限界です・・・」
ミードリが座り込むとヴィーシャが言った。
「半分以上の街道はつぶしたわ、これで良いでしょう、当分つかいものにならなくしたわ」
ついて来ていたフィスはドラゴン体から人間体へと変化し、チヌックの背に飛び降りた。
「ふむ、あとから確認して飛んできたがここまで破壊すれば修復に何カ月もかかるだろう」
「修復したとしてまた破壊すればいいのよ」
ヴィーシャが強い目つきで答えた。
「このまま王都までかえる・・・いえ、北東にある国軍の駐屯地まで直接戻るわよ」
ヴィーシャの話しにヤヒスが答える。
「ショートカット出来るから早いな・・・チヌック、どのくらいかかるかな」
「は、我が主、あと一日と言うところかと」
「一泊ね、野宿よ」
ヴィーシャがそう言うと、チヌックは夕暮れまでその翼を広げていた。
野宿をした翌日、チヌックの目が効く時間帯から北東に飛んでいた、早朝の出立とあってか、昼前には国軍の駐屯地に降りることが出来た。
ヤヒスとヴィーシャは足早に、団長の天幕に急いだ。
「おっ、ヤヒスだな、報告か?」
兵士はすんなりとヤヒス達を駐屯地に通し、そのまま団長の天幕へと急いだ。
「失礼します」
ヴィーシャがそう言って天幕に入ると、団長は顔を上げた。
「おう、ずいぶん早かったな」
「はい、最大限のスピードで当たらせていただきました」
「それで、成果は」
「街道の先にある砦を完全に破壊、街道は岩石や魔法でほぼ使用不可能にしてきました、これは街道の半分に値する距離で、修復は何カ月もかかるやもしれません」
「良くやってくれた、これで魔王軍も作戦をくじかれ出方を変えてくるだろう、いや、本当に良くやってくれた、これは謝礼だ」
団長はゴールドの詰まった袋を机に置いた。
「申し出はありがたいですが受け取れません、冒険者が国軍の要請を受けたこと自体異例です、これは金銭ではなく、双方歩み寄りの上で発生した事態かと、そこに金銭が介入するのは互いにしこりが残るでしょう」
ヴィーシャは団長に頭をさげて言った。
「そう言ってくれるとありがたい、国軍が冒険者に金銭を支払って任務を与えたと言うのは建前上あまりよろしくなくてな、理解が早くて助かる」
団長は苦笑いをしながらゴールドをさげた。




