109 ギルド長の心境
ヤヒス達はギルド長から勇者パーティーに推挙された。
「おことわりします」
ヤヒスがはっきりとした口調で答えた。
「ちょっとヤヒス!」
ヴィーシャがそれをとがめる。
「俺たちはただの冒険者です、気ままに冒険をして時とあれば魔王軍を討伐する、ただののほほんとした集まりですよ」
「なるほど、勇者パーティーには興味が無いと、ヴィーシャさんはどうですか?」
ギルド長はヴィーシャにも話を振ってきた。
「ふぅ・・・正直なところヤヒスと同じ気持ちです、他のメンバーも恐らくそうでしょう」
「・・・なるほど、では勇者パーティーの件は無しと言うことで」
ギルド長は両手をポンと合わせて言った。
「「え?」」
「強制されない?」
「はい」
「勇者の称号も付かない?」
「はい」
「ただの冒険者?」
「はい」
ヴィーシャとギルド長は端的にやり取りしている。
「ん・・・ここからは私個人の話しで、聞いたら忘れて欲しいのですが、勇者パーティーって互いにいざこざが多いのですよ、その仲立ちをするのは嫌なんです、しょっちゅう勇者パーティーが入れ替わって管理が面倒、名をかさにトラブルを起こすとまぁ・・・問題も多くて」
ギルド長はため息をつく。
「そこで国から指名された勇者パーティーをウチで私が責任者で管理するのですよ、正直やりたくないです、ああ、でも大丈夫ですよ、本人たちがそのように大層な身分はいただけないと丁重に断ったなどと報告しておけば、国の方も何と言う謙虚さ、などと良いように解釈すると思いますから」
ヤヒスとヴィーシャはぽかんとしている。
「再確認します、勇者パーティーの称号を拒否なさいますか?」
ギルド長は手を組んで言った。
「はい、拒否します」
ヴィーシャははっきりとした声で返した。
「けっこうです、ご退室ください」
ギルド長にそう言われて二人は階下に降りてきた。
「おっおりてきたぞ、なんぞ真剣な話をしとったか?」
フィスは椅子に座り、足をブラブラさせて言っている。
「そぉーよ、大層な身分をくれるって言うから断ってきたわ」
ヴィーシャが疲れた顔で答える。
「俺たちはパーティーホームでごちゃごちゃやって、色んな地方の魔物を討伐して、美味しいもの食べるくらいが丁度いいんだぁ・・・」
ヤヒスも目を細めてつぶやいている。
「何となく理解しました、もめごとは嫌ですしね」
「ミードリ理解が早い、その通り」
ヴィーシャとミードリはいやだと言うわりには、会話は楽しそうだ。
「断ってだいじょうぶだったのかな」
パムは心配そうにヤヒスの顔を見つめている。
「ははは・・・大丈夫、ギルド長さんのおかげかな?」
彼らは楽しそうに会話をして笑いあった。




