108 勇者パーティー
西方の山脈地帯に魔王軍の隠れ家と、そこに通じる北からの隠蔽された街道があることを知ったヤヒス達は、その場はでは手出しをせず、王都へ向かい冒険者ギルドに報告することにした。
王都に到着すると、その足で冒険者ギルドへ向かった。
ヤヒスとヴィーシャはギルド長に呼ばれ二階の部屋でソファーに座していた。
「西方の辺境、山脈地帯に魔物の活動が見られたと聞きましたが」
ギルド長は手を組んで話を進めた。
「はい、山脈地帯に隠れ家が、魔物の数は不明ですが、その場所に通じる北からの街道が確認されました、オークなら二体通れる広さです」
「北からですか、魔王軍の軍勢が今現在北に展開している、つまり北のさらに奥には何がしかの居城があり魔王がいる、そこから西方へも軍勢を送れるようになっていると言うわけですか?」
「おっしゃる通りです」
「・・・北方に我々の目を引き付けておいて、西方に軍を送りそちらから攻めてくる算段、もしくは同時に軍を動かすことも考えられますね」
「西方に展開していると言うことは、東方にも軍を送っている可能性もあるでしょうか?」
ヤヒスの質問にギルド長が答えた。
「私もそれを考えていたところです」
「西方はどうしましょう、下手なタイミングで動けば相手がどう出てくるかわかりません」
ヴィーシャが前のめりで質問する。
「当然西方の魔王軍はその点も警戒するでしょう、あなた方はどのようにその魔王軍の拠点と街道を発見したのですか?」
「鷹を使役して探らせました、俺たちのことは相手には見えていないはずです」
ヤヒスはチヌックのことを報告した。
「グリフォンのことは報告を受けています、それとドラゴンも」
ヴィーシャとヤヒスはピクリと身体を震わせた。
ヤヒスはギルド長に聞いた。
「ギルドの規則に冒険者は人間でなければならないとの一文は?」
「ありません」
「ドラゴンやグリフォンを使役してはならないとの一文は」
「ありません」
「私はあなたたちのパーティーメンバーをどうこう言うつもりはありません、興味があるのは1パーティーの戦力が魔王軍5千を倒せる力を有していると言うことです」
ヴィーシャの気配が変わり低い声になった。
「その力があれば国を転覆できると、そう言う見方をされているのでしょうか」
「そうではありません、それにはるか昔に同じように強大な敵が出現した時に、突出した力を持つ人間の一団があらわれ、敵を蹴散らしたとの伝承があります、王国ではそれの再来だとしています、彼らは勇者パーティーと呼ばれていたそうです、あなた方はすでに勇者パーティーと見られているのですよ」
「勇者パーティーとはあの5つしか存在しないと言われている・・・?」
ヤヒスが質問する。
「はい、それは今説明した勇者パーティーにちなみ、他より優れたパーティーを指す用語として現在は使用されています、そして今現在また一組出現した」
「勇者パーティーは5つだけ、その席は誰かを蹴落とさなければ手に入らない」
ヴィーシャは静かに言い、ギルド長はゆっくりとうなづいた。




