106 ヤヒスのこと
西へ向かって一日目の夕方は中規模の村があったので、そこに宿泊することになった。
「客人用の家がありますので、そこを利用してください」
村長はそのように言ったが、ヴィーシャはそこに突っ込んで話を進めた。
「まって、そこって部屋は一つなの?」
「はい、そうでございますが」
「四人女の子で一人は男よ、他に何かないの」
そう言われて村長は、麦わらが積み重ねてある場所を指さした。
「俺はあそこってわけね・・・」
ヤヒスがそうつぶやくと村長は頷いた。
夕飯は村長の家で取ることになった。
内容は山菜や川魚である。
ヤヒスは田舎育ちのため、村長と料理のことで意気投合している。
「マスターはどうも、人ウケが良いと言うか、いや人以外でもだが、どうにもそう言う部分があるな」
フィスが川魚の焼いたものを食べながら言った。
「そうなのよね、荒くれ者のイエールやその友達なんかにも妙に受けが良くて気付いたら友達になっているような感じよ、だいいちあなたドラゴンだもんね」
ヴィーシャは山菜を口に運びながらしゃべる。
「ヤヒスさんは人当たりが良いですからね」
ミードリはクスクス笑いながら言っている。
「元魔王軍幹部の怪しげな男を、自分の村に行くように勧めるぐらいだものね・・・」
食事が終わるとヤヒスと女性陣は分かれて寝床に向かった。
「マスターがワラ床でワシがベッドと言うのは納得がいかんわい」
フィスがベッドの上で渋い顔をしている。
「男性と女性は別の部屋でと言うのが、大体の冒険者の常識なのですよ」
ミードリがなだめている。
「ヤヒスに同じ部屋で良いって言っても絶対にワラ床で寝ると言い張るわよ、アイツはそう言うヤツよ」
ヴィーシャの意見にパムも賛同の言葉を発した。
「ところで小耳にはさんだのだが、マスターは王都で下水掃除をしていたと言うのは本当か」
フィスがあぐらをかいてヴィーシャに問いかけた。
「本当よ、誰もやらない最底辺のクエストをこなして、結合スキルでダンジョンを復活させたの」
「ふん・・・信じられんな、あのような大器でレアなスキルを持ちながら」
フィスは不満そうな表情をしている。
「私たちはね、運が良かったの、レアスキル持ちがダンジョンを見つけたって聞いて、私がそれだけで半ば強引にヤヒスをパーティーに入れたのよ、そうしたら結合のスキルは使い方次第で化けるときたし、剥離のスキルも反則みたいなスキルだったわ」
「剥離は身をもって知っている、ワシのウロコをすべてはぎ取ったからな、あんなスキルがあるとは信じられんかった」
しばらくヤヒスの話題で盛り上がったあと、誰ともなく床についた。




