104 辺境への不安
魔物の先遣隊5千を壊滅させたヤヒス達のパーティーはまだ炎が上がる戦場に背を向け、人間側の陣地に戻ってきていた。
団長が正面から出迎えており、後方の兵士と冒険者はざわめいている。
「ふぅむ、本当にやってのけるとはな、理解を超えた剣撃、見たこともない威力の魔法、おまけにドラゴンときた、普通の冒険者ではないと言うことか」
「そう思っていただいて結構です」
ヴィーシャは頭をさげる。
「しかしドラゴンとはな、どこに隠していたのだ?」
「この子はドラゴンが人間身体になった姿で、変身を解除すればドラゴンに戻ります」
「ううむ・・・お前がそう言うのならそうなのだろう、しかしなぁあまりにも常識に外れている冒険者パーティーだな、まぁ、ここまで一気に壊滅させられたとしたら、魔王軍もしばらくは様子見をするだろう、兵団を交互に駐留させるだけで良さそうだな」
全員で団長に挨拶をして後方に戻ると大騒ぎになっていた。
「ヴィーシャ!お前は何をやったんだ!?」
「ドラゴンなんて従えているのか??」
「魔法の威力が大きすぎるぞ、どうなってんだ」
いちいち相手をするのも面倒なので群衆には「秘密だよ」「内緒」と適当にあしらって、陣地の外れに抜け出してきた」
「よっ、ヤヒス」
「イエールか、先読みされていたか」
「へへっ俺の読んだとおりだな、魔力はミードリに、ドラゴンはそこのガキが変身したと言うことだろ?」
「ガキではない!200歳だ!それに本体がドラゴンでこの姿が変身したものだ」
フィスは気に入らないと言った態度である。
「お前らはこれからどうするんだ?」
イエールが聞いてくるので、ヴィーシャが答えた。
「さっき考えたばかりだけれども、辺境を見て周るわ、魔王軍が秘密裏に軍を展開させている可能性が考えられるわ」
「なぜそう思う?」
「ここの一カ所に目を向けさせておいてひそかに、辺境に軍を配備、用意がととのったら全軍で各国を襲撃すれば人間側は総崩れよ」
「うん、ありうるな・・・俺たちもここを抜けて辺境や他国に出張ってみても良いかもしれんな」
イエールはヴィーシャと話をした後でどこかへと消えて行った。
「とりあえずホームに帰るか」
ヤヒスがそう言うと全員が賛成して、チヌックをグリフォンに戻し背に乗った。
「グリフォンまで使役しているのか・・・」
「どうなってんだ」
群衆から声が漏れるが、フィスのドラゴン形態を見せた以上グリフォンを隠している必要もない。
全員がグリフォンの背に乗って、戦場を離れて行った。




