102 団長
魔王軍幹部をヤヒス達が討伐したと判明し、その場はちょっとした騒ぎになり、ヤヒスは幹部だった男の証言を、兵団の団長に直接話すことなった。
「現在の魔王軍の勢力は5千、後方部隊が順次合流してきており、最大で7千の兵力になる・・・か」
団長は顎を押さえて地図に見入っている。
「ところで、話しが逆になったが、お前たちはどうやって幹部を倒したんだ」
団長の問いにヴィーシャが答える。
「この、ヤヒスには他人の魔力を自在に吸い取るスキルがあります、相手の魔王軍幹部は膨大な量の魔力を有していたため、私たちを侮りろくな警備もつけずに自室まで招き入れる愚行を行いました、その結果ヤヒスのスキルで魔力をすべてはぎ取られ、魔力は枯渇、戦闘不能状態で逃走しました」
「ふぅむ、面白いスキルだな、とにかく分かった、お前たちは戦列に加わってくれ」
「団長、その所なのですが、私達のパーティーを先行して突撃させていただけませんでしょうか」
ヴィーシャがそう言うと団長は眉を上げたあとに目を細めた。
「魔王軍幹部を打ち取ったことは認めよう、だが相手の数が多すぎるぞ、突撃するのは勝手だが死なない程度に逃げてこいよ、その場合は支援射撃くらいはしてやろう」
「ありがとうございます」
ヴィーシャは礼をして天幕を出るとヤヒス達の所に戻ってきたが、そこにはイエールがいた。
「おっ戻ったかヴィーシャ」
「イエール、あなたも来てたのね」
「また何かおもしろそうなことやってんだって?お前たちのパーティーは飽きさせねぇからな、ふん・・・お前らあの軍勢を全滅させるつもりだろう?」
「どうしてわかったの?と言うよりもどうしてその発想が出てくるのよ」
「まずお前の担いでる大剣、体格のわりによろつきもしてねぇ、ただもんじゃねぇと見た、新入りの女のガキ、ありゃなんだ、ごくわずかだが気が漏れ出してるぞ、それと魔王軍幹部の膨大な魔力を引っぺがしたってな、その魔力、どこへやった?」
「カンが良いのね、お見通しのかぎりよ」
「やー、イエールはお見通しだったか」
ヤヒスが頭をかきながら近づいて来た。
「おうよヤヒス、おめぇらのことだからまた何事か企んでるだろうと思ってな」
「企んでるはよしてくれよ、はは、でもまぁ全部片づけるよ、その次に倍の軍勢が来ても片付ける、見ててくれよ」
ヤヒスはそう言って自分の胸を叩いた。




