101 国軍への合流
「で、俺をどうするつもりだ?」
魔王軍幹部だった男は床に座り込みながら言った。
「どうもしないよ、魔王軍に帰っても良いけど多分始末されるよね、おじさんの魔力は枯渇しているから冒険者もできない」
ヤヒスは冷静に言ってのけた。
「・・・」
男はうつむいたままである。
「そうだ、ここから南に下がったところに俺の故郷のソビル村があるから、そこに住まわせてもらいなよ、農業をなりわいとした静かな村だよ、ヤヒスの紹介で来たと言えば家の一つくらいあてがってくれるよ」
ヤヒスは自分の住んでいた村に住むことを提案した。
「元魔王軍幹部の俺がか?」
「言わなきゃわからないし、誰も深く聞いてこないよ、ただ農作業は一生懸命やらないとだけどね」
ヤヒスはこの男が、静かな農村で暮らしていけると信じているようだった。
「コイツを持って行け魔王軍幹部の証だ」
彼は首から下げていた紋章の書かれた円形の板を渡してきた。
「その男のことはそれくらいにして、国軍や冒険者の先発隊に合流するわよ」
ヴィーシャがそう言ったので、全員部屋から出て階段を降りて林の中を歩んでいった。
「あっ、国軍の展開している場所が見えますよ」
ミードリがロッドでその方向を指した。
「ならばここから降りた方が近いな」
フィスは斜面を降りて行った。
「ああっ、もう勝手に行動するんだから・・・」
ヴィーシャがぶつぶつ言いながら後をついて行く。
斜面を降って石くれのころがる平原に出ると国軍が設置したと思われる掘り割りが見えてきた。
魔王軍の方向からやってきたので兵士が警戒して何か叫んでおり、すぐに取り囲まれてしまった。
「何だお前たちは、魔王軍の方からやってきたな、スパイだろう!」
当然言われることである。
「僕たちは冒険者です」
ヤヒスがそう言うと、兵士は冒険者プレートを見せてくるように言った。
「ヤヒス・・・どこかで聞いたな」
兵士が首をかしげていると後方の冒険者一団が声を出した。
「ヤヒスじゃねーか!」
「兵隊さん、ソイツはヤヒスダンジョンのヤヒスだよ!」
「おいヤヒスなーにしてたんだ」
「おっ、そうかヤヒスダンジョンの、ではお前たちはあの方向で何をしていたんだ」
兵士の質問にヴィーシャが答える。
「魔王軍幹部を倒して来たのよ」
「はぁ?なに言ってんだ?」
兵士は訳が分からないと言う顔をしている。
「これです」
ヤヒスはそう言うと魔王軍の紋章が刻まれた円形の板を兵士に差し出した。
「魔王軍の紋章!本当に幹部を倒したのか!?」
「本人は幹部と言っていましたがね」
兵士や冒険者の間にどよめきが起こった。
「とにかく、お前たちも戦いに参加するのだな?」
兵士の問いに、パーティー全員が笑顔でうなづいた。




