100 魔王軍幹部
廃城に居を構えていた男の強大な魔力を剥離のスキルですべて引き剥がし、結合のスキルでミードリとパムに注ぎ込んだヤヒス達は、もはやただの中年男性となった者から情報を引き出そうとしていた。
「あんたが魔王軍に入った理由、階級、魔王軍の目的と現状を吐きなさい」
ヴィーシャは剣を首元に当てている。
男はしゃべりだした。
自分は元冒険者で魔力が強い方だったこと、妙な男に魔王軍に誘われ、手に何かの絵図を書き込まれると、膨大な魔力が宿り、魔王軍幹部になったこと。
現在展開しているのは魔王の先遣隊で、この先もまだ膨れ上がることをぼつぼつと漏らして行った。
「魔王軍は今回の遠征で最大七千の兵力を割いている、この先もっと増えるだろう、全軍が揃ったところで開戦だ、人間側はせいぜい3千ほどだろう?、話しにならんぞ、悪いことは言わん南へ逃げるか援軍を要請するかしろ」
「魔王軍の先遣隊は今現在何千なの?」
ヴィーシャが問いかける。
5千ほどだ」
「ふーん・・・ちょうどいい位の数かな、ねぇおじさん、その5千が壊滅したら後詰めはどうするのかな?」
ヤヒスが男に声をかける。
「上からの指示は詳しく聞いていない、全軍揃うか人間側が仕掛けてきたら突撃させろとしか聞いていない、だが先遣隊が全滅したら進行は一時的にでも止まるかもな」
「だってさ」
ヤヒスは振り向いて全員に言った。
「フフフッ、元の姿になって暴れても良いかな、マスター」
フィスが嬉しそうに笑っている。
「この際だからまぁ、いずれバレると思ってたし元の姿で思い切りやっていいよ」
フィスは拳を上げて喜んでいる。
「さきほど吸収した魔力で特大火炎魔法を放ってみたいです」
ミードリが嬉しそうに言う。
「ねぇヤヒス、この剣にファイヤーボムの属性載せたらどうなると思う?」
ヴィーシャはにこにこして表情だ。
「お、お前たちは何なんだ、魔王軍に勝つつもりか?」
男は会話を聞いて驚いている。
「そうだよ」
ヤヒスが振り向いて言った。
ヤヒス達は今まで蓄えてきた力や武器、仲間の能力を信じて、今この時こそ自分たちの出番であると確信していた。




