99 魔力の剥離
魔王軍から離れた山中に降り立ったヤヒス達は、北の方に強大な魔力を感知し、その源に接触すべく歩みを進めていた。
「オークがうろついているな・・・」
ヤヒスがオークの小隊を迂回しながらそう言った。
「おそらくこの先も増えていくでしょうから、ゆっくり迂回して進みましょう」
ミードリが提案する。
「魔力が近い、もうすぐそこだ」
フィスがそう言ってしばらくすると。廃城が見えてきた。
「あそこに魔力の主がいるってこと?」
ヴィーシャがつぶやく。
廃城には10人に満たない護衛がついていた。
「こんな数の見張りでどういうつもりだ」
ヤヒスがしゃべるとフィスが言葉を返してきた。
「この位置は魔王軍の軍勢の横に当たる、こんな位置に頭が陣取るとはまず考えんだろう、それに見つかってもどうとでもできる自信が、あの廃城の主にはあるんだろうよ、マスター」
「このままワシが護衛を気絶させてくる、合図をしたら城の前まで来い」
フィスはそう言って腰を落として近づき、護衛を音もなく倒して言った。
合図があったので全員で廃城の入り口まで素早く進む。
城の内部もフィスが先頭をきり、見つけたオークを淡々と処理していった。
2階への階段を登ると、古びたドアがあった。
フィスが促すので全員で2階へ上がり、扉を静かに開けた。
そこには椅子に座った中年男性がいた。
「人間だわ」
ヴィーシャがつぶやく。
「そうだ、人間だよ、早い話が、人間が魔王軍に組みしていると言うことだ、お前たちが来ていることは魔力感知で分かっていた、歓迎するよ私は・・・」
「フン、こう言う自分が絶対的強者だと確信しているようなヤツは往々にしてベラベラと良くしゃべる」
フィスが相手の会話を遮る。
「話を聞くだけなら後でも出来るわ、ヤヒス」
「はいよ」
呼ばれたヤヒスは軽い足取りで前に出た。
「剥離!魔力!」
ヤヒスがそう叫ぶと男の身体から光りの柱が立ち上り、ヤヒスの手のひらに乗った。
そのまま男に背を向けて戻り、ミードリとパムの肩に手を振れた。
「結合!魔力!」
ミードリ達の身体はまばゆく光り、しばらくするとそれは収まった。
「・・・何をやった?」
男はヤヒス達に問いかける。
「お前の魔力を全部引き剥がして、そこの二人に結合させたのさ、試しに強力な魔法でも一発放ってみてよ」
そう言われた男は言葉を返してきた。
「なにをわけのわからぬことを・・・な!私の魔力がない!?一滴もだ!!」
「だから言ったでしょう、魔力を引き剥がしたって、さて、魔王軍のことを吐いてもらおうかしら」
ヴィーシャは背中の大剣を抜いて男に向けた。




