98 北の魔王軍
魔王軍の進出を押さえるクエストを受けたためヤヒス達はチヌックに乗り北へと急いでいた。
出城を構えた魔王軍の先発隊の位置まで2日かかる道行である。
「ほーう、マスターはグリフォンを従えておったのか、やはり大したものだな」
フィスがチヌックに絡んでいる。
「我は主に生み出された、つまり主は親も同然と言うことだ」
「ふーん・・・まぁ、ドラゴンのワシには強さでは及ぶまいて」
「・・・強さでは及ばぬが、主に使えたのは我が先である、つまり先輩と言うことになるな」
「・・・」
「・・・」
「ちょっとヤヒス、なんかアイツらバチバチやっているんだけど」
ヴィーシャがヤヒスに小声で話し掛ける。
「俺も気になってはいたんだけど、こう言うのは放っておいた方がかえって良いかなって・・・」
「まったく、マスターだか主だかしらないけども」
夕暮れ時が近くなってきたので、地に降りて野宿を始めた。
「グリフォンかと思えば、鷹とはかわいい姿になったな」
フィスはまたチヌックに絡んでいる。
「貴殿も普段は少女の姿ではないか」
「ぐ・・・これは目立たないようにだな」
「なんだか仲良くも見えるね」
パムが二人を見て言った。
「喧嘩するほど仲が良いんですよ」
とミードリがほほ笑んでいる。
「おい、チヌ、脂の濃い部分が焼けたぞ、1日飛んで明日も飛ぶのだぞ、エネルギーを蓄えろ」
「かたじけない、しかしチヌとは?」
「チヌックなど立派な名前はもったいなかろ、チヌで十分だ、そんなことよりも皮の部分も食べろ」
「うむ」
フィスとチヌックは確かに仲良くなっているようにも見える、双方とも魔物であるから気が合うのかもしれない。
そんなこんなで夜が更けた翌日。
チヌックは上空から見えた出城から離れた場所に降り立った。
「上空から見たけど魔王軍は確かにすごい勢いだったね」
パムが戦場の方をみて言葉を発した。
「この先も軍勢が増えるのでしょうか」
ミードリは不安そうにしている。
「なに、イザとなればワシが出れば何とでもなるわい」
フィスは拳を上げて歩いていたと思ったら急に歩みを止めた。
「強力な魔力を感じる・・・」
「え?向こうに何かいるってこと」
ヴィーシャが問いかけると、フィスは返事をする。
「馬鹿みたいに強力な魔力だ、魔力だけならワシよりずっと上だな」
「どうするの?」
ヤヒスはフィスに問いかけた。
「ふん、これだけのものとなると、どうも頭に相当するヤツだろう、ここは先駆け、軍勢は無視して頭を取るべきだな」
「そんな馬鹿みたいに強力な魔力を持った相手にどうするんだ」
ヤヒスがフィスに話し掛けると、彼女はこう言った。
「マスターがいれば造作もないことだ」




