表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
84/88

-84- 八重の霊力

「……あぁ、そうだわ。火縄のお二人から、八重ちゃんの霊力が高いことは伏せてほしいって言われてたわね」

「え?」

「知らなかったでしょう? 自分が千重ちゃん並みの霊力を持ってるなんて」

「え、ええと……」

「火縄のお二人は、八重ちゃんの霊力が高いことが周りに知れたら、八重ちゃんが危険かもしれないから……って言って、八重ちゃん本人にも知らせていなかったのよ。敵を騙すには味方からってね」


 隠されていた? 危険? 騙す? ……一体、どう言うこと……?

 何もかも分からない。一体、私は何者なの……?


「けれど、もう火焚の嫁になったから大丈夫でしょう。これからは存分に力を発揮すると良いわ!」


……。


…………。


……力を発揮……?


 何の力を……?


「母上。八重が混乱しています」

「あら、まあ。可愛らしいこと」

「母上」


 何やら太蝋さまが仲裁に入ってくださったようだけれど、それを気にするほどの余力も無い。とにかく頭が混乱してる。


「ともかくね。八重ちゃんの守護の力のお蔭で、シロちゃんの熱猫としての力を封じることが出来たの。これだけ強力な封印なら早々綻びることは無いわ」

「は、はぁ……」


 最早、気の抜けた返事しか返せない。

 すると、急にお義母様が(まと)う空気が変わった。


「とは言え、シロちゃんが熱猫であることに変わりはないわ。いずれは消滅させなくてはならない」

「あ……」


 お義母様の言葉で現実に引き戻された。

 そうだわ。シロは災物(さいぶつ)。人類に災害を(もたら)す者。消してしまわなければならない。

 そうしなければ、今日のような悲劇が再び起こってしまう。

……近い内に、シロとの別れが訪れるんだわ。

 でも――


「看取れるのなら……それが、良いです」


 せめて、看取りたい。消えゆくシロを見送りたい。

 今日のように姿形が朧げになって分からなくなるのを、ただ見ているだけなのは嫌。できることなら消えゆく瞬間まで傍にいたい。


「……にゃるぅん」


 シロはご機嫌そうに鳴いて、私の傍に横たわった。そのまま毛繕いを始める。こんな姿を見れるのも、あと何回になるのか……。

 私はシロの頭に手を伸ばした。指先で少し撫でると、シロは許容してくれた。これも初めてのことだった。


「まぁ、それは今すぐでなくても大丈夫よ」

「……え?」


 お義母様は私とシロを交互に見た後、片目をパチッと閉じて言った。実に奇麗に閉じられていた。


「霊力を一定数保ち続ければ、その子はずっと存在してるわ。霊力の持ちすぎは良くないけれど、存在を維持し続ける為に霊力を与える分には害はないもの。ちょっと変わった飼い猫として、家で飼えば良いわ」


……飼っても良い? シロを? 災物なのに……?

 私は信じ難い思いで、災物討伐の任に就かれている太蝋さまを見上げた。


「い、良いのですか……?」


 太蝋さまはシロを殺さなければならないと言っていた。それが正しいことだと私も頭では理解していた。

 なのに、力を封印されているとは言え、災物を家で飼うなんて許されることなのだろうか……?


 太蝋さまは咳払いしたあと、気まずそうにしながら答えた。


「ごほん……。本来なら良くは無い」

「太蝋?」

「……。だが、今回の熱猫が強力な存在であったことは周知の事実だ。それを一時的に封印し、徐々に霊核を削っていくことでしか討伐が可能でないとなれば……まぁ、多少の時間が掛かったとしても怪しまれることは無いだろう」


 災物討伐の専門家である太蝋さまが、熱猫であるシロの存在を一時的に見逃す……と言うこと?


……つまり、許される限り、シロを傍に置いていて良いと言うこと?


「熱猫の力を封印する役目は八重ちゃんに任せるわ。あとで、封印が緩まないようにするための手順を教えるから覚えてね」


 夢心地で居たところへ、お義母様がそんなことをおっしゃった。

……つまり、シロのお世話は全部、私がして良いと言うこと?

 シロを可愛がっていて良いと言うこと……?


 じわじわと嬉しさが込み上げてくる。

 傍に居てほしいと思っていた子を、傍に置いておける。それを許してもらえた。


「は、はいっ。精一杯、努めます……っ! ありがとうございます……っ!」


 私はお義母様に向かって、三つ指をついてお礼を言った。

 また嬉し涙が込み上げてきて、それを見られない為でもあった。

 災物であるシロが存在していることを喜ぶなんて、きっと許されない。

 これはただ、熱猫を確実に討伐する為の作戦の一環。私は、そのお手伝いを少しするだけ。

 きっと、その間は火焚の屋敷に居ても許される。

 私は贖罪の機会を与えて貰えたのだ。


 熱猫であるシロを封印し続けると言う、お役目を貰うことで――


  △ ▽ △

 


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ