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-45- 岩のような、その人の名は

 

 呑気な重低音が三叉路に響くと同時に、声の主に道を開けるようにして隊員全員が廊下の壁際に一列に並んだ。そして、緊張した面持ちでビシッと敬礼している。それは、太蝋と斬島も例外では無かった。


「休めィ」


 その一言で隊員達は両腕を背中側に回し手を組んで、両脚を肩幅まで広げて休憩の体勢を取った。

 先ほどまで近所に住む兄ちゃんのような気安さを見せていた隊員達が、軒並み揃って軍人らしい姿を見せたことに柿丸は面食らった様子で茫然としていた。


 まるで岩を連想させるほどの大きな体躯。白髪混じりの短髪は黒髪と混ざってまだら模様になっている。歩く度にのしのしと地面を踏み鳴らす音が聞こえてくるような足取りは、雄大な亀を連想させた。肩に掛けている上着の肩口には、この人物の階級を表す徽章きしょうが着けられている。


「わぁっ……!?」


 突如として現れた壮年の軍人は柿丸の腋下に手を差し込み、高く持ち上げて自分の肩に座らせた。柿丸は謎の人物に肩車された状態で、太蝋と斬島の方に近付いて行く。

 柿丸を肩車した人物の行動に呆れながら、太蝋は口を開いた。


「大隊長。ここはベーゴマ遊びの会場ではありません」


 太蝋の言葉を聞き、剛田大隊長――災物対策炎護大隊隊長・剛田豪(ごうだたけし)中佐は、口を尖らせて言った。


「随分、楽しそうにしてたじゃないかァ。俺も混ぜて貰おうと思って、自慢の独楽を持って来たってのにヨォ」


 そう言って、剛田は持参してきた独楽を肩に乗せている柿丸に見せてやった。剛田のように大きな独楽は、何者をも吹き飛ばしそうなほど大きい。斬島の愛独楽である独楽丸にも楽勝しそうだ。


「大隊長。本来、今は公務をするべき時間なのですが」

「公務公務って、おめェは本当に堅いのォ。ちっとばかし遊んだっていいじゃろが」

「遊ぶにしても今では――」


 正論でありながら小言に聞こえる太蝋の言葉を、剛田は遮って言った。


「暑気払いだァ! おめェら! 炎護隊ベーゴマ大会やっぞォ!」


 炎護隊で最も発言権がある、大隊長の剛田が宣言したのでは部下である太蝋に止める術はない。すると、太蝋の肩にずっしりと重い衝撃が走った。


「太蝋! おめェもやんだぞ!」


 剛田が肩に手を置いただけだ。それだけで身体が若干傾くほどの重みを感じる。しかし、太蝋は慣れた様子で剛田の誘いを突っ撥ねた。


「子供の遊びは卒業しました」

「子供の遊びだァ!? ベーゴマは漢の遊びでィ! それを教えてやる!」

「遠慮しま――」

「よォし! 行くぞ、おめェら!」


 こうして庁舎に集まっていた炎護隊の隊員は、殆どがベーゴマ大会に参加しにくることとなった。数少ない女子隊員は冷ややかな目で、その様子を窓から覗いていたらしい。


 強制参加の運びとなった太蝋は斬島から借りた独楽を使って参加したものの初戦敗退。斬島と剛田から揃って「独楽への愛が足りない!」と責め立てられる羽目となった。

 大人ばかりが集まるベーゴマ大会の中、柿丸は斬島からの教えを受けて独楽への信頼と愛情を持ってして大会に挑んだようだ。その結果、柿丸の愛独楽・亀八は大人達のベーゴマを打ち倒していき、三位に食い込んだ。大健闘を果たした柿丸は、実に楽しそうに笑って大会に参加しており、いつの間にやら柿丸が機関車に乗り込むことをこだわっていた理由も明かされていた。


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