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アレルギー

作者: 雉白書屋

「ようやく落ち着いたな……」


 とある山小屋で、彼はそう一人呟き、笑みをこぼした。

 ……何が『落ち着いた』だ。環境に馴染めず、こんなところまで逃げてきて、もう何もかも終わりではないか。ああ、まだ打つ手があったのではないか……なんて、落ち着いた今だからこそそう思えるのだ。当時の状況を思い出すと身震いがする。

 食べ物、空気、あらゆるものに体が拒否反応を示し、気が狂いそうになった。そう、アレルギーだ。

 それなりの企業に入り、うまくやっていたが、ある時、突然体にかゆみを感じた。オフィスでボリボリと体を掻いていたら、周囲に訝しがられた。私は体を掻くのを我慢しながら、かゆみの原因は食事にあるのだろうと考えた。それ以降は食事の内容に気をつけるようにしたのだが、また一つ、また一つとアレルギー反応が次々と現れ、最終的に私の体は人間そのものに対してアレルギー反応を示すようになってしまった。こうなってしまった以上、もう無理だ。仕事も何も言っていられない。失敗だ。もう……他に方法が……こうするしか……。

 彼は手に持ったナイフを見つめ、喉が絞まる感覚に襲われ、嗚咽した。その時だった。


「え、な、誰」


 突然、山小屋の扉が開き、男が中に入ってきた。今はシーズンオフである上に、この山小屋は古く、天井には穴が開いており、放棄されていることは明らかだ。それなのに、なぜこの男はここに来たのだろうか。

 そう思った彼は咄嗟に身構えた。


「も、もう、こうするしか、あ、あ、ああああぁぁぁ!」


 男は突然叫び出し、彼に飛び掛かった。彼は驚いたが、負けじと応戦し、もつれ合い、そして……。


「はぁはぁ……あれ……?」


 なんとか相手を気絶させた彼は、ふと気づいた。


「アレルギーが……治ったのか?」


 人間がこれだけ近くにいるというのに、体がまったくかゆくならない。人里を離れたことで治ったのか、それとも一時的なものなのか。相変わらず人間という存在に対して嫌悪感を抱いているので、おそらく後者だろう。しかし、これは好都合だった。まさに飛んで火にいるなんとやら。

 そう考えた彼は男を担ぎ上げ、山の奥へと進んだ。

 そして、隠しておいた宇宙船の中に男を運び込むと、せいせいしたとばかりにあっという間に地球を離れた。


「いやぁ、現地調査はあまりうまくいかなかったが、ははは、サンプルを捕獲したということで良しとしよう。本当は密猟は禁止されているが、まぁ、山で行方不明になるなんてこともあるらしいし、それに、一刻も早く研究を進めてアレルギーを克服しなければならないからな。他の星の連中に先を越されるほうが問題だ」


 ほっとした彼は、そう呟きながら擬態スーツを脱ぎ始めた。その下から出てきた彼の顔は、ノミによく似ていた。

 一方、彼に昏倒させられた宇宙人の擬態スーツの下はダニのような顔をしていた。しかし、彼がそれを知るのは地球を遠ざかった後の話……。

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