表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
邪に堕ちし神達の番 〜復讐の焔は、世界をも焼き尽くす。〜  作者: ぷん
一章 異世界召喚篇 〜追放と絶望を添えて〜
7/77

第六話 邪なる龍は誓う

契約を終えた俺は、彼女の指示の元で戦闘経験やレベルを上げる事に専念した。

この遺跡に存在する魔物の全てがレベル三桁を軽く超えた化け物の集まり。

彼女との契約で手にした力でも、一撃でも貰えば致命傷になり得る。

人との戦闘経験はあるが、こう言った元の世界に存在しない超常の存在と相対すのは初めてだ。


「まぁいきなり戦えと言っても、このレベルの魔物では厳しいか…どれ、少し手本を見せてやろう。」


そう言うと彼女は、俺達に迫り来る紅き隻眼をした巨大な蜈蚣の前に立つ。

右手に、神龍鎧装による鎧を装着する。

そして、ぐぐっと鎧を着けた右拳を力強く握り締める。

巨大蜈蚣の口から放たれる刃の如き鋭さを持った触手が、彼女に襲い掛かる。


「遅い。」


巨大蜈蚣の攻撃は、速かった。

しかし、彼女はそれを上回る速さで地面を強く蹴り。

一瞬の内に巨大蜈蚣の間合いに潜り込み…ありったけの力が込められた右腕を振り抜く。


蜥蜴は木っ端微塵に吹き飛び、凄まじい轟音と風圧が遺跡内を駆け巡る。

そして彼女は、何事も無かったように此方に戻って来る。


「ふむ、やはりこの程度では運動にならんな。…む?どうした?」


強すぎる…

あの蜈蚣ってレベル3桁の化け物だったよな?

それを一撃で仕留めるって…彼女はどれだけ強いんだ?


「私の強さに驚いたのか?愛やつじゃな…私はこれでも、かつて世界最強だった龍神だぞ?

これでも、身体能力の八割が制限されておるがな。」


これで、2割の力だって言うのか?

どうやら俺は、恐ろしい怪物の番となってしまったようだ…

だが、味方としてこれ以上に頼もしい人物は居ないな。

これから、安心して背中を預ける事が出来る。


「ほれ、新しい贄が来たぞ。次はお前の番だ。」


彼女の言葉通り、洞窟の奥から新たな巨大な魔物が顔を出した。

牛と羊の双頭。

四本の巨腕には、斧・大剣が2本ずつ。

鋼のような肉体。

黒き瞳の隻眼。


禍々しい魔力が、遺跡内に充満する。


「ふむ、相手にとって不足はなかろう。レベルは250といった所か?油断するなよ。」

「分かってる。

ーー【神龍鎧装ドラゴスーツ】」


漆黒に染まりし鎧が全身に装着される。

その姿は小型の竜。

力が漲る…身体が軽い…まるで自分の身体じゃないような感覚。

そして、だからこそ分かる。


俺の前に立ち塞がる、牛羊頭の巨大な魔物の異質さと…圧倒的な強さが…

そして、分かる。

勝負は一瞬だ…力比べと行こうか。


俺は、地面を大きく踏み込んだ。

同時に、牛羊頭も同じように大きく地面を蹴った。


速さは俺が優っている。…神龍鎧装による強化補正を加えて、ようやくだが。

四本の腕より、音速の斬撃が振り下ろされる。

スキル【龍眼】によって、奴の動きが…振り下ろされる斬撃が視える。

視えて尚、全てを躱す事は不可能と判断した俺は、2本の斬撃を回避し、もう2本の斬撃を右腕を犠牲にして受け止める。

そして、残った左腕を奴の顔面目掛けて振り抜いた。


「ーー【龍撃槍】ッ!!」


振り抜かれた拳は、全てを貫く槍となりて、牛羊の頭を吹き飛ばした。

これで絶命した…そう思った次の瞬間ーー首を失った巨軀が最後の力を振り絞り、残された腕に持った獲物を振り下ろす。

が、その一撃は空を斬る。


龍斗は、真上に飛び魔物から奪った巨大な斧を振り下ろした。

渾身の力で放たれた一撃によって斧は砕け散り、魔物の身体は縦に真っ二つとなり息絶えた。


勝った…俺は安堵して、その場にへたり込む。

少しでも判断が遅れれば、此方が死んでいた…こんな命懸けの闘いをあと何度やらなければならないのか…

なんて、弱音を吐く暇もないな。


遺跡の奥から、更に先程と同じ牛羊頭の魔物が3体現れる。


「ふむ、あの3体を倒せばレベルが上がる筈だ。」


冗談だろ。

だがまぁ、やるしか無い。

俺は強くならなければならない…強くなる為なら、この命だって惜しく無い。


「さぁ、始めようか!」


再び、神龍鎧装を装着する。

このスキルは、装着し続けると魔力が減っていく。

残りの魔力は、40000と少し。

その間に、片付ける。



ーー


「ふぅぅ…」


そう溜息を吐く、少年の側には…

数百を超える巨大な異形の怪物達の骸が転がっていた。

一体、どれほど激しい戦闘だったのだろうか…それは計り知れない。

少年、否、少年であった者はこの戦いを経て、怪物へと成り代わった。


彼に己の全てを託した女は、この光景を見て思う。


(まさかここまでとは…これは、期待以上だな。)


自分の力を与えたとは言え、初めての実戦でこうも上手く扱える者は少ないだろう。

寧ろ、その圧倒的な力に逆に呑まれてしまう事も少なく無い。

初めて会合した時から、この少年に可能性を感じていた。

そして今、確信した。


奴ならば、必ず遥かなる高みへと辿り着ける。

この私さえ、いつか超えるかも知れない。

だからこそ、私の役目はあの愛しき番を最後まで支え続けること。

全てへの復讐を終えた先、例え彼の側に誰一人残らなかったとしても私だけは側に居よう。

そして…彼と一緒ならば地獄でも何処でも落ちよう。


ーー


流石に、疲れたな…戦い始めて、どれだけの時が経ったのだろうか…一時間?一日?

どうでも良いか…今はただただ、心地いい。

この戦闘の中で多くの事を学んだ…力の扱い方、命の駆け引き、スキルの運用…

そして、自分よりも強い、絶対的な強者との命の鬩ぎ合い。


レベルが上がった事で、更に進化した。


俺は、ステータスを開く。


====================================


リュート・イズモ (15)

種族:半龍半人

性別:男

レベル:2

攻撃力:150000(+α)

耐久:14500(+α)

敏捷:135000(+α)

魔力:155000/155000

幸運:30000

固有スキル;【邪神龍の権能】・【復讐者】・【邪神の眷属】

保有スキル:【神速】・【対魔力・神】・【龍神の寵愛】・【神龍鎧装】・【龍圧】・【龍ノ番】・【神龍眼】・【邪龍ノ怨恨】・【龍気爆発】NEW ・【気配察知】・【邪龍ノ呪】・【龍魔法】…

称号:【龍神の番】


====================================


これで、レベル3…か。

ヴォーディガーン改め、ディナが言うには、このステータスは既にこの世界でも最強に等しいらしい。

だが、慢心は出来ない。

俺の復讐相手は、曲がりなりにも"勇者"と"女神"だ。

無限の成長速度と最強の固有スキルと保有スキルを有した勇者とディナと等しく"神"に名を連ねる女神。

どちらも俺よりも或いは俺を超え得るポテンシャルを兼ね備えているだろう…かつて伝説の英雄と謳われたS級勇者の中には神の領域へと近付いた者もいるようだしな。


だからこそ、俺も最も強くならなければならない。

この階層の魔物達は粗方、狩り終えた。

レベル100〜250の魔物では、大した経験値は得られない。

次の階層へと進めば、レベル300〜の魔物が存在するらしいからな。

ここは、1階層よりも更に下。


最下層。

魔物の強さもそれなりだと思っていたが、よく分からんな。


最終目的は、地上へと出ること。


遺跡を登って行けば、自然と出口へと繋がる。

少し休憩して、次の階層に登ろう。




ーー


1階層へと、上がった。

驚くべき事に、遺跡の中に世界が広がっている。

寒い…辺りは薄暗く、一面が雪化粧となっている。

ここが、遺跡?


地上に出て来たと勘違いしてしまう程に、この2階層は異質な空間だった。

そして、最下層とは異なる魔物が新たな獲物を見つけてこぞって集まってくる。

それも綺麗に、ディナを避けて俺の元に。


賢い魔物なのだろう。

思えば、俺が戦って来た魔物達は皆が尋常ならざる知性を持って行動していた。

この遺跡に住まう魔物が特別なのか、或いはこの世界全ての魔物が賢いのか…

まぁとにかく、俺はどうやら奴らに弱者だと判断されたらしい。

舐めやがって…俺がお前達を喰らうんだよ。


俺は、本能のままに魔物達を蹂躙して行く。

殺して、殺し尽くす。

強くなる為に、生きる為に…奴らを完膚なきまでに蹂躙する為に


次第に魔物達の顔は、弱者を痛ぶる様な愉悦ではなく、恐怖の色へと染まっていた。

背を向けて逃げ出す魔物も現れ出すが、逃がさない。

そうだ、この際に【邪龍魔法】を使ってみるか。


背を向けて逃げ出す魔物に狙いを定めて、手を伸ばす。


「ーー煮え滾る憤怒は顕現する。

          ーー【獄焔ノ息吹(ドラゴブレス)】」


漆黒の焔が、魔物を包み込む。

焔に包まれた魔物は、悶え苦しみ、悲鳴の雄叫びを上げながら、塵も残さず消滅した。


凄まじい威力だな。

これが邪龍魔法の中で、一番弱いなんて嘘だろ?

レベル400台の魔物を数秒で殺せるなんて、チート過ぎる。

だが復讐で使うには、丁度良いかもな。


その後も俺は、邪龍魔法の性能を試しつつ魔物を蹂躙してゆく。


レベルも2から3に上がった。

魔物を殺しながら、進み続けると…次の階層へと繋がる魔法陣が設置された部屋に辿り着いた。


「すまん、少し休憩して良いか?疲れて眠い。」


休む暇もなく戦い続けたのだ、眠くなるのは当然の事だ。


「そうだな。なら、ほら…」


ディナが、そう言って自分の膝をポンポンと叩いて何かをアピールしてくる。

どうやら、膝枕をしてくれるらしい…俺はありがたく、彼女の膝を枕にする。

黒タイツのさらさらした感触と、良い肉付きの太ももの心地良さをお供に俺は深く眠りについた。


「ふふ…」


ディナは、自分の膝で眠るリュートの髪を撫でる。


「こうしてみると、やはり年相応の幼さが垣間見えるな。確か、15歳だったか?そんな年端もいかない子供が、あのような事を経験したのだ…表面上では平気がっても、その心は酷く荒んでいる筈だ。」


リュートから聞いた話では、女神だけでは無くこれまで共に過ごして来たクラスメイトにもスキルや魔法による蹂躙を受けたと言う…何とも、不愉快な話だ。

あの忌々しい女め…その手法は、あの日ーー我らを陥れた時と同じか。

あの女の権能…愛と美を司る力によって、恐らく女神は召喚者達に権能を行使したのだろう。

奴の権能は、その者が持ち合わせていた別の側面を、隠した本性を、狂気を引き出す力を持つ。

そして最後は、自分の意のままに他者を操る…


ああ、忌々しい!

今直ぐにでも、殺してやりたいが…今の私とリュートでは、無理だな。

女神と勇者を敵に回す、つまりそれは、この世界そのものを敵に回すのだ。


相手は、神。

最強の力を秘めた勇者。

4大勇者国の強者達。

憎き、龍族。


私でさえ、このような馬鹿な真似はしない。


だが、此奴は違った。


此奴は言った。


『誰が相手だろうが関係ない。俺の邪魔をするなら、例え世界だって敵に回してやる。』と。

その覚悟に応えてなければ、妻として契約主として格好がつかん。


故に、誓おう。


私が、リュートを最期まで導くと。


ディナは、リュートの額にキスをして眠りについた。



評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
Xで知り、読みにきてみました! ストーリー、人物や能力などの各種設定、どれも作り込みというか解像度がすごく高くて、読んでいくほどハマっていくような作品だと感じています。 あまりこの手の小説を読んだ…
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ