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邪に堕ちし神達の番 〜復讐の焔は、世界をも焼き尽くす。〜  作者: ぷん
第五章 エーレ聖王国編
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第六十三話 全部上手くいく

次の更新は月曜日です

「君達が…?」

「まぁな、自慢するつもりもなかったが…先手と言うか、手柄を横取りされたりはしたがな」

「まさか、本当に?」


未だに、半信半疑。

それはそうだろう…多分、この国にとって"帝国"と"円卓十剣"は絶対なる武の象徴なのだろう。


「信じられないか?」

「あ、ああ…だが、我らを圧倒したあの力を考えれば信憑性はある」

「もう一つ、事実を証明出来る証拠もあります」


突然、アルレイヤが手を挙げてそう言ってきた。


いきなりだな。

だが、彼女はなんの考えもなく行動する人物ではない。

だから、彼女の行動を肯定しよう。


「円卓十剣と騎士団の他に叛逆姫が死んでいた…という噂も聞きましたか?」

「ああ」

「その噂だけは偽りです。叛逆姫アルレイヤ・ペンドラゴンは生きています。そして私こそがアルレイヤ・ペンドラゴンです」


ピクッ


マイアが、僅かに反応する。


「なん、だと?だが、かの叛逆姫は人間ではなかったはずだぞ」

「今からその証拠を見せましょう」


アルレイヤの姿が変化する。

そして、彼女こそが本人だと裏付ける決定的な"証拠"が姿を現す。


「「なっ!?」」


エレクトラーとマイアの2人が同じような驚き方をする。

当然の反応だろう。

彼女の顔は各国に指名手配されている…だから、2人が彼女の素顔を知っていても不思議ではない。


「この通り。私は窮地に陥っていた所をお二人に助けていただき、死を偽造してこのエーレ聖王国に訪れたのです」

「……ほう」


マイアが、そう声を漏らす。

だが、決して疑いではなく確信を持ったので出たのだろう。


しかし、正体を明かす手を取るとはな。

完全な予想外だったが、まぁ悪くはない。

リスクはあるのだが、交渉の手としてはギリセーフとしておこう。


「私はこの目で確かに、2人が円卓十剣と騎士団を瞬殺した瞬間を目にしています」

「とまぁ、そんな訳だ」

「………理解した。だが、私達は明後日の決闘には出場する…そして必ず勝つ!それがあの子達との約束だからな」

「アンタらの心意気は素直に尊敬する。だが、果たしてアリエーゼ子爵はどうだろうな」

「?」

「確かに表向きでは魔族や亜人族って言う異種族を快く屋敷に受け入れた良い人間かもな。だが、裏では粗相を起こした侍女を娼婦に売り飛ばしたり、色々と黒い噂も沢山ある」


アリエーゼ子爵については既に調べが付いている。

プレイアンデル姉妹の情報を集めると共にアリエーゼ子爵の情報も同時に調べて貰っていた。

酒場で話を聞いていた時からずっと、アリエーゼ子爵という人物に不信感を持っていた。

何というか、同じ匂いがする。


()()()()()()()()()()()


「俺にはわかる。奴は紛れもない悪人だ」


何故。

それは俺と同じ類の屑だからだ。


「だがまぁ、そうだな。それだけで悪人って決めつけるのもよくないよな…だから、それを渡した」


マイアが、手渡された盗聴石を一瞥する。


「…………」


まだ、迷いが生じている。

だが、首尾は上場って所か。


「アンタらが最強の闘神士として君臨する前、当時最強と謳われた闘神士の悲惨な死を遂げたと言う話は知ってるか?」


俺は、そんな話をする。

一同は、ポカーンとしながらも黙って話を聞く。



「自由を得るための決闘に勝利し、見事に自由を得た次の日ーー彼は奴隷へと堕とされた妹を解放する為の資金を子爵に払った。

だが、解放された妹は…試合中に子爵が招いた貴族達の手によって陵辱され精神が完全に壊れた後だった…」


「なんだと?」

「それで、その闘神士が黙っている筈がない」

「勿論、その光景を見た闘神士は激怒し子爵に斬りかかろうとしていた…が、子爵が雇っていた凄腕の傭兵達によって彼は殺され妹はそのまま娼婦に売り飛ばされ最終的には自殺した」


「……っ」

「この情報は全て"闇鳩”から聞いたとだけ、言っておこう」


"闇鳩"、この世界では情報屋の事を指す単語だ。

マイアとエレクトラーも勿論、知っている筈だ。

奴らの情報は、この世界のどんなものよりも信憑性がある。


「ま、信じるか信じないかはアンタらに任せる。俺の話が信じられないならやはり、確かめるしかない」

「アリエーゼ子爵は、我々を裏切ると?」

「ああ、確実に」


確信を込めて、頷く。


「それで、どうする? 俺達と共に幻界領域に向かうか…それとも自ら死ぬ為に決闘に望むのか」


2人の顔を見て問う。

出来れば、このまま前者を選んで貰いたい所だが…


「姉上…」

「悪いな少年」


2人が立ち上がる。


「我々はそれでも、約束の為に戦う」


決意は、固い。

まぁ、そうだろうとは思っていた。

この話を始める時点から、こうなると予想していた。


だから、別に何も気にしない。

どうせ最後には、俺の思った通りに事が進むだろう。

充分に準備は整った、後は時を待つだけだ。


「まぁ、当然だな」


人間誰しも、これまで積み上げてきた物を崩す事には恐れを抱く。

それは、信頼と信用も同じ事。

ポッと出の俺達と長年関係を保ってきた子爵…どちらを信じするかは言わずもがな。


この場面だけは、子爵に勝ちを譲ろうか。


「すまないな…君が我々の事を思って忠告してくれているのは理解している。だが、な…我々にもこれまで積み上げてきた闘神士としての誇りと矜持がある…夢にまでみた最後の一勝を簡単に捨てる事など出来まい」


アルレイヤが何か言いたげな顔をするが、ディナがそれを黙って静止する。

的確な判断だ。


「姉上の言う通りだ。昨日現れたばかりの君達と長年あの子達の面倒を見てくれた子爵…どちらが信頼に値するかは明白だ…しかし、我々もまた子爵に不信感を抱いているのは確かでもある」


その通りだ。


「それでも、アリエーゼ子爵を信用してるのか?」


「完全に信用し信頼している、とは言い難い…だからこそ、確かめるつもりだ」


マイア、やはり優秀な人物だ。


「君達が言った通り子爵が何か小癪な真似をしてこようと私と姉上の勝ちは揺るがない…それに、子爵はきっとあの子達に下手な真似はしないだろう」


ああ、それは間違いだ。

見当違いも甚だしい…

この姉妹は何処まで行っても、甘いな。


何故こうも簡単にそんな事が言える?

自分達もまた、人間達によって自国を滅ぼされたと言うのに…


「我らの国の誇りに賭けて明後日の決闘、必ず勝ってみせるさ。どんな障害も乗り越えてな」


美しいな。

その心意気は、素直に賞賛できる。

だからこそ、許し難いな。



「そうかい…なら、素直に応援してるよ…アンタらが勝利する事をな」


姉妹が、武器を手に取りドアノブに手を掛ける。


「今日の君との戦い、実に楽しかった」

「ああ、出来ればまた戦いたいばかりだった」

明日の夜…俺達はこのエーレ聖王国を発つ」


マイアとエレクトラーが、足を止める。


「出発のギリギリまで俺達は聖都の出口の聖門コンスタンの前に居る。アンタらが何もかも信じられなくなったその時はーー来るといい」


姉妹は何も言わず。

扉を開き去っていく。


その背中には、固い決意と覚悟があった。



ーー


2人が去った後。


アルレイヤが、申し訳なさそうな顔をして口を開いた。


「リュートさ、リュート…すみません」


謝ってきた。

と言うよりも、やっぱりまだむず痒いな。

アルレイヤにはいい加減、呼び捨てで俺達の事を呼ぶようにと伝えた。

俺達は下僕と主でもなければ、王と配下でもない。

対等な友だ。


だから、いつまでも『さん』って言うのはらしくない。

それに俺の方が年下だし、むしろ俺の方がさんを付けて呼ぶべきだしな。


「それで、なんで謝るんだ?」

「勝手な真似をしてしまいました。正体をバラすことでのリスクは分かっていましたが…それでもこの場で何か活躍出来ればと思い…ですが、軽率でした」


可愛らしい耳が、たらりと垂れている。

彼女にとってよほど、やらかしたと思っているのだろう。


「謝るなよ。アルレイヤの行動は助かった…それに、判断を任せたのは俺だ…だから、例え予想外の事が起きようともそれは俺の責任だ。気に病む必要はない」

「そうだぞ、寧ろあの行動があったお陰であ奴らとの駆け引きが上手くいったと言える」


そう、ディナが正しい。

円卓十剣の話に於いて、アルレイヤが正体を明かしたあの行動のお陰であの2人は信じた。

だから、あの行動は俺にとって賞賛すべき行動だった。


「ですがーー「もいいだろ。あの判断は的確だった…団長である俺がそう判断した」


まだ遠慮しそうだったので此処は強引に話を切らせて貰う。


「……はい、リュートさ…んんっ、リュートが決めたのなら私ももう何も言いません」


そう、それでいいんだ。

流石のアルレイヤも団長の判断となれば何も言えなくなる。

こう言う場合に於ては、傭兵団の団長としての権限を使わせてもらうとするか。


特にアルレイヤの場合、自分を責めすぎる癖がある。

俺達が特に気にしていないような事も、無駄に気にしすぎている時もある。

だから、話が泥沼化しそうな時は躊躇いなく団長のリーダーとして俺が決める。

彼女は王女であると同時に、騎士でもあった。

そう言った意味でも、実に効果的だ。


「それにしても、本当に上手く行くのか?」


と、ディナがそんな声を上げる。


「何がだ?」

「あの2人には子爵に対して揺るぎない信頼があったように見える…果たして、そんな人間達が素直に我らの言葉を信じられるのか?」

「大丈夫だろう…確信を持ってそう言える。あの2人は確実に思った通りの行動を取る筈だ…口ではああ言ってたが、心の中では迷っている」


人間、人をそう簡単に信じる事は出来ない。

だから、今回は行動ではなく言葉で揺さぶる。

結果的に、上手く行ったと言える。


「まぁ、安心しろ」


俺は2人と顔を合わせる。


「全部上手くいく…必ずな」


自信満々に、不敵な笑みを浮かべてそう言った。


リュートのそんな表情と言葉を目に、そして耳にした2人は顔をボッと紅くする。

アルレイヤに関しては、鼻血まで垂れていた。


 

尚、リュートの最後の表情はこの物語の主人公とは思えない悪人のような顔でした。


この話が面白い!続きが気になる!と思ってくださった方は是非、評価や感想を宜しくお願い致します!

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