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邪に堕ちし神達の番 〜復讐の焔は、世界をも焼き尽くす。〜  作者: ぷん
一章 異世界召喚篇 〜追放と絶望を添えて〜
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第五話 覚悟、必ず救う為に

勇者side


【鬼龍院藍那】


私達が異世界に召喚されてから数日が経過した。

最初は困惑していたクラスメイト達は、あの日を境に変わってしまった。

あの光景は忘れない。

私が幼い頃から、何度も助けられた出雲龍斗が女神様と彼等の手によって痛め付けられて追放されてしまった。

あんな事があったと言うのに、彼等はもうそんな事さえ忘れて魔神と戦う為に王城に在る訓練場でスキルの訓練を行なっている。


皮肉にもみんなが、あの世界にいた頃よりも生き生きしているようにも見える。

それぞれのグループが確立して、各々が本気で強くなろうと取り組んでいる。

それ自体は、私も良い心がけだと思う。

ただ、この世界に来てから、クラスメイトの殆どが別人の様に変わってしまった事に私は不安を感じていた。


「キリュウイン殿。訓練の途中に余所見は行けません。」

「!ごめんなさい、レジーナさん!」


そうだ、考え事に集中してしまっていた…レジーナさんにまた迷惑を掛けてしまった。

私は、目の前で剣を構える彼女を見る。

この人は、この王城の中でも一番何を考えているかが分からない…ただ分かるのは、この王国の中で最強と謳われる実力の持ち主だと言うこと。

そして、あの女神様が最も信頼を置く数少ない人物。

彼女は、古き時代に名を馳せた勇者の血を引く勇血族と呼ばれる一族の出身らしい。


レジーナさんは、私達勇者が魔神やその軍勢と戦い生き残る為の訓練やこの世界の簡単な知識を教えてくれる。

最も、座学の方に関してはみんな面倒だと言って殆ど出席して居ないと愚痴を漏らしていた。

私の教え方が悪いのだろうか…と落ち込んでいたのは意外だった。

可愛らしい一面もあるんだなぁと少し可愛いと思ってしまった。


「今日はここまでにしよう。」


と、レジーナさんが構えていた木剣を下げる。

またやってしまった…本当に申し訳ない。

何やってるんだろ私…駄目だなぁ、やっぱり彼が居ないと調子が出ないや。

普段は、ぶっきらぼうで教室の隅で本を読んでいる大人しい彼だけど…私や友人の雲母さんや寧々さんと話す時は、明るくて思いやりがあって…些細な変化にも気付いてくれる優しい人だった。


だから、あの判定は今でも何かの間違いだったのでは無いかと思っている。

女神様も彼の結果を見て、何か動揺している顔をしていた。

あの人は死んだと言っていたけど、私は絶対に諦めたりしない。


レジーナさんや同じグループの雲母さん・寧々さん・由香里さんと一緒に強くなって必ず彼を探し出してみせる。

その為には、私が得たスキル…そして明日から始まる遺跡ダンジョン攻略でレベルを上げなければならない。




ーー


「ーーはぁっ!!」


私の振るった剣がゴブリンの首を刎ねる。

これで5体目…ようやくレベルが上がった。

この世界では、魔物や人を殺す事によって魂を経験値に変換してレベルを上げる事が出来る。

召喚された勇者達は基本的に、国が用意した遺跡ダンジョンを難易度の低い順番から攻略していきレベルを上げたり、実戦練習を行い経験を積んでゆく。


遺跡ダンジョンと言うのは、不思議な仕組みをしている。

まずダンジョンに現れる魔物はダンジョン内に満ち溢れる魔力を餌にして生まれる。

その数に制限はなく、放置すれば何千、何万と増え続ける事になり、最悪の場合は外に出て来て被害を及ぼす事もある。

そして、遺跡を攻略する為には、その核とそれを守護する主を討伐しなければならない。


この《駆け出しの遺跡》の主はオークと呼ばれる豚の魔物。その危険度はD。

今の私達でも油断をすれば、命を落としかねない危険な存在だとレジーナさんは言っていた。

実際に、数百年前に召喚された勇者の中にも雑魚だと油断してオークの餌になった者もいる様だ。

ただ、S級勇者はレベルが1でも上がれば戦い方やスキル次第で簡単に屠れる。

A級勇者でもスキルが強力な者なら簡単に突破できる魔物だとも言っていた。


浦蟻くんや葛葉くんの勇者グループは、他の勇者グループよりも進みが早い。

5階層で構成される遺跡ダンジョンの4階層まで攻略し、浦蟻君はレベル5に葛葉くんはレベル4に到達した。

他のメンバーもレベル3を突破したと聞いた。


私達は慎重に効率よくレベルや戦闘経験を積む為に、ゆっくりと遺跡ダンジョンを攻略して行く。

私はスキル【戦乙女(ヴァルキューレ)】の効果で他の勇者(みんな)よりも得られる経験値やステータスの数値が多い。

現在、私達のレベルは3を突破したばかりだ。


皆んなでステータスの確認をする。


====================================


アイナ・キリュウイン (16)

種族:人族

性別:女

レベル:3

攻撃力:400

耐久:300

敏捷:450

魔力:400/400

幸運:50

固有スキル:【戦乙女ワルキューレ

保有スキル:【身体強化・改】・【気配察知】・【威圧】・【騎乗】

称号;S級勇者


====================================


改めて見ると、ステータスの伸びが多い事が分かる。

レベル1の時、攻撃力は100だったが、レベル2で150、レベル3で150と特に攻撃力と敏捷の数値が高く増える。

同じS級勇者の雲母さんは、魔力の伸びが誰よりも凄い。


これは、恐らく個人が持つスキルが関係しているんだと思う。

勇者のスキルを得た裏蟻くんのステータスは幸運以外が1000を超えたと聞いた。

スキル【勇者】は、オールラウンダー型で保有するスキルや固有スキルの中に含まれる力も桁違いだ。

葛葉くんは、攻撃力だけなら裏蟻くんを超えているらしい…A級勇者の中でも頭ひとつ抜けていると言っても過言では無いと思う。


それに、浦蟻くん達は女神様に気に入られているようで王国内でもかなり優遇されている。

一方の、私達の様な女神様を完全に信用して居ない派閥は王国内の立場はあまり良くない。

それでも、勇者としての価値がある私達は彼のような扱いを受ける事は無く、比較的に優遇されている。


4人の見解としては、なるべく女神や王国の人間に不信感を与える行動を取らずに様子を見る事で今後の方針を決めて行く。

だから今は、自分の身を自分で守れる位強くなる事を優先する。


そしてなんと、レジーナさんからとんでもない情報が私達に伝えられる。

なんでも、遺跡ダンジョンにはある条件を満たすとイレギュラーが発生し、主のオークよりも強い裏ボスが現れると言う。


その条件とは、1階層から5階層に存在する五つの石版を揃える事。

すでにその条件は満たしている。

意外だったのは、レジーナさんが少なくとも反女神派に近しい立場にいる私達に協力してくれている事。

レジーナさん曰く、「魔神討伐を成すのは君達だと私は思っている。それに私は…」と。

そこまで信用してくれているのは、凄く嬉しかった。

だから私は、レジーナさんの期待にも応えたい。


浦蟻くん達が主のオーク達と5階層で戦っている裏で、私達は同じ5階層に存在する隠し部屋に辿り着く。

そこに待ち受けて居たのは…


二本角。

真っ赤な肌。

大人よりも二回りほど大柄。

強靭な肉体。

それは、日本の昔話などでよく聞く鬼だった。


「アレが、魔鬼(オーガ)!」


オーガ…危険度はオークよりも高いCランク。

一眼見て分かる…強い。


「みんな、作戦通りに行こう!」

「おっけ〜」

「ええ。」

「うん!」


推定レベルは15

私達は3…S級勇者の私でも1発喰らえば即死。

だから、勝負は一瞬。


「【継続治癒(リジェネ)】!」


由香里さんの固有スキル【治癒士】の能力【継続治療(リジェネ)】で常に魔力と耐久の継続回復を保険に掛ける。

そして、私と寧々さんが同時にオーガに向かって駆ける。


「!ヴァダァきまあなあ!!!」


私達の存在に気付いたオーガが雄叫びを上げながら、此方に向かって凄まじい勢いで迫って来る。

私達は一切、止まらない。


「ーー【我は、氷神(アイ ユミル)】ーー」


「ーー【君臨、凍土世界(コキュートス)】ーー」


背後から、そんな声が聞こえてくる。

刹那ーー私達を除いた全てのものが凍った。

圧倒的な高質量の冷気がこの部屋をそしてオーガの身体を氷の彫像へと変える。

正に、圧倒的。

これが、S級勇者の固有スキルが一つ。


だが…


「やはりこれだけのレベル差だと、足止めが限界ね。」


雲母の言葉通り、氷漬けとなったオーガは自力で氷を破り再び動き出す。

足止めには十分すぎる威力だった…あとは、私と寧々さんが手筈通りに!


オーガの渾身の一撃が寧々さんに迫る。

寧々さんは、ニヤリとほくそ笑む。

そして覚悟を決め、高らかに叫ぶ。


「ーー【纏え、電雷厄祓の鎧(アイギス)】…」


鳩走る雷を纏った鎧が、寧々の身体に装着される。

そして、腕を前方で交差しオーガの拳を真正面から受け止める。


「ーー【紫電は、巡る(ボルトシフター)】!」


オーガの拳が彼女の鎧に触れた瞬間ーー凄まじい電流がオーガに向かって放たれる。

その威力は、オーガの丸太の様に太い右腕を木っ端微塵に消し炭にしてみせた。


だが、オーガは止まらない。

歴戦の猛者たるオーガは、残った左腕に渾身の力を込めて寧々に向かって振り下ろす。


「遅い!」


が、振り下ろした筈の左手は根本から切断されていた。

オーガの左腕を斬り飛ばしたのは、一振りの剣。一人の気高き少女。

オーガは、ここでようやく気付く。


自分が真っ先に狙うべきだったのは、この女だったと。


誇り高きオーガは両腕を失っても尚、戦う事を止めない。

己の命が潰えるその時まで、戦い続ける。

腕を失ったのなら、脚を使うまで…そこで気付く。


すでに、詰んでいたと。


「でやぁぁあ!!」


彼女の刃は既に、オーガの首筋を捉えていた。


スパンッ!


雌雄は決した。


《レベルが上がりました》


《レベル3→8》


こうして、オーガを討ち取った私達は平等にレベルが上がった。

勝負は一瞬だったが、少しでも油断すれば此方がやられていた。

これまでの、ゴブリンやスケルトンとは比べ物にならない程に強かった。

私一人では、結果は分からなかった。


でもこれで、私達は更に強くなれたと思う。


待ってて、龍斗君。


貴方は私が必ず見つけてあげるから。









固有スキル【戦乙女ヴァルキューレ】:あらゆる武器を自由自在に操り、戦闘に於いて身体能力や判断能力が格段に向上する。レベルが上がる毎に新たな能力を獲得。

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