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邪に堕ちし神達の番 〜復讐の焔は、世界をも焼き尽くす。〜  作者: ぷん
第四章 円卓十剣、襲来編
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第四十八話 瞬殺

次回の更新は金曜日の13:00分です。

「な、なんだと…?」


その真実を聞いたパーシヴァルは動揺する。


「貴殿も勇者だったのか。」


しかし、すぐに落ち着きを取り戻し妙に納得する。

きっと、抱いていた違和感に納得したらしい。


「リュートさんが、勇者……っ!?」


アルレイヤは大きく目を見開いて驚いている。

他の円卓十剣もまた、俺に注目する。


「うそ〜!?あの子も勇者なの!?」

「ふむ…何処の勇者であろうか」

「ヴィーナスが、勇者召喚したって聞いたぜ?」


三人は、驚きながらも冷静に言葉をかわす。

パーシヴァルは、興味深そうに俺に問い掛ける。


「リュート・イズモ、貴殿は何故この場に?あの女神の召喚した勇者でありながら、先の発言はなんだ?」


明らかな、探り。

俺が本物の勇者だと、疑っている様子はない。

こいつらにも、どう言う理屈かは分からないが嘘は通じない。


「聞いての通りだ。俺は勇者であって、勇者じゃない。」

「?」

「女神とは馬が合わなくてな。そして、自分以外の勇者が気に入らなくて、別行動を取ったって訳だ。」

「ほう…」


馬が合わない、事実だ。

俺はすでに勇者と言う名前は捨てた。


他の勇者が気に入らない。

これも、事実。


虚偽はない。


「だが分からないな。勇者であるならば見た筈だ、勇者の力を…」


ああ、見たさ。

"勇者"と言う力の片鱗を…その恐ろしい本性も。


「ああ、見た。だが、俺にとっては()()()()()()()者ばかりだった。」

「…」


その言葉に、さらなる興味を抱く。

翠緑の瞳が、俺を映し出す。


「そして女神は、この俺が他の勇者と比べて異質だと判断した。」


異質、決して間違っていない。

俺は、他の勇者とは異なった存在。

女神ヴィーナスに召喚された勇者でありながら、無能としてこの地に呼ばれた存在。


「女神の想像を上回るほどの、な。」

「女神を待ってしても"異質"と呼ばれた男、か。」

「ああ、女神にとって俺と言う存在は不都合だったらしい。」

「確かに、あの女は己の身を誰よりも案じる神であるからな。だがーー」


空気が、変わる。


「貴様は、言ったな。我々、勇者を殺すと。」

「ああ、その通りだ。」

「どうやって?見た所、貴様にその力は無いように見えるが?」

「本当に、そう思うか?」


ニヤリと、笑みを浮かべる。


奇妙な目で、何かを探るような目でパーシヴァルは俺を睨む。

そして、僅かにその大槍を握りしめる。


「俺達は、お前達よりも強い。」


ゾクッとした表情を見せるパーシヴァル。

微かな、変化に気付いたらしい。


俺とディナの纏う、空気が変わったことに…

奴だけが気付いた。

流石、と言うべきだ。


「我々よりも強い、だと?」


「ああ、その通りだ。」


何故ならそれが、事実だから。


俺は奴らよりも強い。


本気で、そう信じている。

実際に、そこまでの差がある。


まだ、分かっていない。


俺とお前には、絶対的な壁がある事を知らない。


「本気で言っている…我々の実力を肌で感じて尚、勝てると確信している?」

「それが事実だからだ。俺と此処にいるディナなら、お前達程度なら皆殺しにできる。」

「ふっ、威勢としては一人前だ。だが…勘違いも甚だしいぞ。この私に勝てる?舐めるなよ、少年。」


白龍が雄叫びを上げる。


パーシヴァルの覇気に応えるように、叫ぶ。

彼の顔に浮かび上がる、歓喜と興奮。


「お前達こそ、あまり俺達を舐めるなよ?」


更に、煽る。


「お前達が自分達を最強だと信じて疑わないように…俺もまた、自分が最強だと信じている。」

「女神が異質だと言っていたのも、頷ける。」


いいや、違う。


女神は俺を"無能"だと判定した。

そして俺は追放された地で、彼女と出会い力を授かった。

だから、女神すら知らない。


女神は俺を、覚える価値すらないゴミだと思っている。


奴はあの日、完全に俺が死亡したと確信しているだろう。


「だがまぁ、今女神を敵に回しても敵わない事は理解している。だが、お前達は違う。

お前達程度なら、勝てる。」

「自分の力を過信しながらも、女神には勝てないと弁えている。面白い…だが、不愉快だ。」

「奇遇だな。俺もお前達が不愉快なんだ。」


軽蔑の意を込めて、吐き捨てる。


「お前達のような腐った人間を見てると殺したくなる。」

「ほぅ…腐っただと?」

「ああ、お前達も、女神も、この世界も…総じて腐ってやがる。」


心の底から軽蔑する。

勇者だから、偉いのか?

女神だから、偉いのか?

奴らは本気でそう思っているから、あのような事を平気で行えるのだろう。


まるで、自分達が"世界"なのだと本気で思っている。



「故に、俺は…俺達は、勇者も女神も殺す。」


その言葉に、アルレイヤは戦慄する。


「何が貴殿をそう動かす?」

「俺は、復讐者だ。」


真実を明かす。


 一歩、前へ出る。


「友だと思った勇者達に蹂躙を受け、屈辱の果てに女神に廃られ…激しい復讐と怨嗟の焔に燃える勇者だ。」

「そうか…合点が行った。貴殿は哀れにもあの女神に廃られた愚者の一人か。ならば、其処にいる女はなんだ?」


舞台は、終盤へと差し掛かる。


「俺が追放された地は、神殺ノ遺跡。俺は其処で、ある者と出会った。」


あの時、あの出逢いが無ければ俺は死んでいた。

そして、今の俺は決してなかった。

全ての始まり、そのキッカケをくれた恩人。

そして、最狂の共犯者。


「有り得ない、あの地より生きて出られる者がいるはずが無い。」

「だから、ある者に出会ったって言ったよな?」


その言葉の真相に気付いたらしい。

口元に、手をやる。

微かな疑心と確信を込めて。

 問うてくる。


「まさか、その者とは…」

「俺は彼女と出会い…その()となった。」


番、その単語を聞いてパーシヴァルは確信へと至った。

すぐさま、女の方に目を向ける。


「い、いや、あり得ない…」


ディナが、一歩前に出る。


「我の正体に気付いたか?」

「復活したと言うのか…邪神龍ヴォーディガーン!」


その名前に、円卓騎士団は動揺する。


「ヴォーディガーンって、いやいや、ありえないって!」

「そうだ、幾らなんでもそりゃ無いって…邪神龍ヴォーディガーンは女神ヴィーナス達の手によって討伐されたんだろ?」

「私もそう聞き及んでいますが…パーシヴァルよ、事実なのですか?」

「邪神龍ヴォーディガーンは、死んでいない。神殺ノ遺跡の奥深くで封印されていたのだ…だが、奴の言っている事が事実ならば、アレは…」


刹那ーー大気が揺れる。


女が、高く嗤う。


「聞いて驚き、慄くが良い!我が名は邪神龍ヴォーディガーン…世界を焼き尽くす混沌と破滅の龍である。」

「邪神龍とその番よ!正気か…本気で、この世界を敵に回すと言うのか!」


パーシヴァルが叫ぶ。


「ああ、我を裏切った全ての者を殺し尽くしてやる。そうせねば、この煮え滾る怨讐が晴れる事はない!」

「我々が、それを許すとでも思うか!」


大槍を構える。

ガレスも。

ルキウスも。

ボールスも。


素早く、冷静に…警戒から、迎撃体勢へと移る。

それに続くように、円卓騎士団の騎士達もまた武器を構える。


「お前達が帝国と女帝に剣を向けるというのなら容赦しない。」

「容赦しないのはこっちの方だ。俺達の復讐譚(みち)を邪魔するのなら容赦なく皆殺しにする。つうーか、元から逃すつもりは無いんだよ。」

「お前達ーー殺せ!」


パーシヴァルが、騎士達に命じる。


その声に応えるように、100を超える円卓騎士団が一斉に俺達に向かって襲いかかってくる。


「悪いが、雑魚に構っている暇はない。だからーー死ね。」


流石に、あの数を一人一人相手にするのは面倒臭い。

それに、これ以上ここに止まるのはリスクが高まる。

だから、纏めて殺させて貰う。


ーー『邪龍魔法』


ーー『龍怨棘(ドラコスパイン)


100を超える漆黒に染まった棘の槍が、迫り来る騎士達の身体の至る所に触れる。

そして、不快な音を立てながら棘が触れた部位が次々に破裂して臓物や血が飛び散り地に落ちる。

その様は、まるで雨のようだ。


時間にして、30秒。


たったそれだけの時間で、100人は居た騎士達が全滅した。


頭、體を失った騎士達の死体を見て残された円卓十剣は驚愕し、アルレイヤは嗚咽する。


悪いな、配慮なんてしてられない。


「うそ、でしょ…?」


ガレスが、声を漏らす。


「幾ら有象無象だとしても、ありえん…」


ボールスが、絶句する。


「嘘だろ…おい!くひひ、やべぇな!」


ルキウスは、歓喜する。


「ほう…流石だ。」


パーシヴァルだけは、顔色すら変えない。


ただ、感心する。


が、それだけだ。


この光景を見ても尚、疑っていない。


自分達の勝利を。


「驚く事はない。この程度の事で円卓十剣の勝ちが揺らぐ事はない。」


その言葉に、ガレス達は笑みを浮かべる。


「そうね、思えば彼等ならこれ位は簡単にやってるしね。」

「ふむ…少々、取り乱しましたが我らの勝ちは揺るがないですな。」

「ま、そうだな。」

「お前達は、あの小僧とアルレイヤをやれ。我は…この神殺しの槍ロンギヌスで邪神ヴォーディガーンを討つ。」


パーシヴァル…どうやら俺が思っているよりも優れた人物だった。


だが、悪いな。


これはお前達が思っているような、接戦にはならない。


何故なら、もう俺達はこの憎悪を抑える事が出来ないからな。


「おい、貴様。まさか本気でこの我と勝負になると思っておるのか?」

「なんーー「すまんな、お前と私ではレベルが違う。」


パーシヴァルの眼前に、ヴォーディガーンが迫っていた。

そして、彼女の振るった拳が顔面を撃ち抜いた。

グシャ。と言う音を立ててパーシヴァルの顔が潰された。


「「「…………………は?」」」

四章終了まで、残り僅か。


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