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邪に堕ちし神達の番 〜復讐の焔は、世界をも焼き尽くす。〜  作者: ぷん
第四章 円卓十剣、襲来編
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第四十四話 ある女帝の独白

次の更新は、火曜日の13時です!

ーー女帝ーー



モルガン・ペンドラゴン。


超大国ブリテン大帝国の頂点に君臨する皇帝。


彼女は今、心穏やかではなかった。


永年、探し求めていた憎き相手を遂に見つけたからだ。


そして同時に、あの時の事を思い出し憤怒と嫉妬に燃える。


ーー


それはまだ、ブリテンが大帝国と名乗る前。


彼女はブリテンの王と妖精姫の間に生まれた娘であった。

人を惑わす美貌。

人を狂わす軀。

大人を凌駕する魔力。

勉学も優れた彼女は、天才と呼ばれ次期皇帝として多くの者に期待されていた。


そんな彼女もまた、自分が皇帝になるのだと信じて疑わなかった。

あの日が、来るまでは…


モルガンが10歳になった頃、新たな皇帝の子が誕生する。

妖精姫と聖霊姫の魂を大きく引き継いだその子は、生まれながらにして人を惹きつける何かがあった。

名はアルレイヤ。


アルレイヤが5歳になった時、貴族や民の話題はアルレイヤで持ちきりになっていた。

人間離れした美貌に加えて、姉にはなかった剣術の方で才能が開花した。


彼女を一際有名にさせたのは、10歳の頃だ。


帝国の皇族に伝わる成人の儀。


それは、未だかつて誰一人として抜けない神話の聖剣エクスカリバーを抜けるか、と言う挑戦。

誰も抜けないので、通過儀礼として適当に流される筈だった…

アルレイヤは、その聖剣エクスカリバーを見事に抜いてみせたのだ。


其処からのアルレイヤの活躍は凄まじい物となった。


帝国近郊にある、禁足地。

 ある時、その禁足地から隻魔種と呼ばれる魔物や魔獣の群れが帝国に向けて濁流のように押し寄せて来た。

帝国はこれを脅威とみなし、円卓騎士団全軍を持って対処に向かった。

次期皇帝として全軍を率いたのはモルガン。


辿り着いた矢先、アルレイヤがモルガンにこう進言した。


『姉上、私が道を切り拓きます。』


そんな言葉を残して、アルレイヤは聖剣を手に群れへと突っ込んだ。


其処で、モルガンは目を疑った。


神話に現れた神の再臨。

その光景を見て、そう思った。

妹、いや、その少女の眼は黄金に輝いていた。

白銀の髪が、風に靡く。

その黄金の剣は、血で塗れ。


歴戦の固体である凶暴な魔物達が、その少女を見て畏れをなす。

本来なら有り得ない事だ、あの残虐で凶暴な隻魔種の魔物達が人間風情に畏れをなすなど。

少女は、ただ冷静に己が役目のままに聖剣を振るう。


『私は、ブリテンの剣。何があろうと私は、ブリテンを護る盾。この聖剣と我が命がある限り、ブリテンは、我が理想郷は汚させない!』


聖剣の一撃が、何十もの魔物を消し飛ばす。

少女の言霊が、騎士達の心を震わせる。

全ての者が、齢10歳の少女に王の器を見出した。


次々と魔物を葬るその姿に、敵味方が畏怖する。

大切な何かを守らんとするその在り方に、味方は心を奪われる。


唯一人、モルガンは酷く恐れていた。

自分の積み上げた全ての物が、音を立てて崩れて行く事を…


全てが終わり、少女が無邪気な笑みで此方に近づいて来る。

今でも思い出す。

あの尊奉と親愛に満ち溢れた瞳と笑顔を。

無邪気なままに、私の全てを奪ったあの忌々しい顔が。


少女は、聖剣を掲げモルガンの前に跪く。

そして、『我が使命、果たして参りました。』と。

そう、言葉を紡いだ。


もはや、誰も彼もが次期皇帝の器は彼女にこそ相応しいと考えていたことも知らずに。

ただ純粋で精錬なる心で、大切な姉の全てを奪ったことも知らずに。

 

国に戻ったモルガンは、事の詳細を偽りなく話した。


隠した所で、見破られる。


皇帝ウーサーと二人の母は、その活躍を聞いて大層に喜んだ。

そして、モルガンが…彼女が今、()()()()()()()()()()を堂々と放った。


『皇帝は、アルレイヤに』と。


その瞬間ーー言葉に現せない凄まじい憎悪と嫉妬が、モルガンの中で渦巻いた。


心からの絶望。

湧き上がる憎悪。

決して消えない嫉妬。


『御心のままに』


その言葉に、あらゆる意味を含んで。


彼女は決意した。


『あの女の全てを奪ってやる』



ーー


「……ッ!」


玉座で肘をついて眠っていたモルガンが眼を覚ます。

ひっそりと静まり返った玉座の間。

帝国の中心部に聳え立つ巨大城。

女帝モルガンが改革時に建てた、強大で強固な城。


数百年の時を掛けて創り上げた、この城こそが女帝モルガンの偉大さを象徴するものだ。

彼女を守護する円卓騎士団と円卓十剣がこの城を拠点とし、貴族などは誰一人として居ない。

絶対的女帝主義であり、かつての貴族達は遥か遠方に追放されるか殺された。


(アルレイヤ…)


かつての夢がいまだに、付き纏う。


(やはり生きていた…まだ私を不快にさせるのか。)


ビキ、バギィ


怒りが抑えきれず、夥しい魔力が暴発する。



「心、穏やかではないな。」


隣のソファーに腰を掛けていた、一人の大女がそう声をかける。

両手側に裸の女を侍らせて、モルガンの方を見る。


「………」


現在、アルレイヤを円卓十剣のパーシヴァル達が追っている。

本来であれば、全戦力を突入したい所だったがあの愚神に派遣してしまった事で叶わない。


が、今のあの女程度であれば容易く殺せるだろう。

だが、ただ殺すのではない。


ただ殺すだけでは、気が済まない。


モルガンは、心の底から憤怒する。

そして、あの時の選択を後悔する。


逃げ出す前に、始末しておけば良かった。 


そうすれば今、こんなにも自分の心が乱れる事は無かったと言うのに…

ああ、忌々しい。


彼女を慕う騎士達や民の暴動や抵抗によって手間取ってしまった。

無論、己に逆らった者は問答無用で殺した。

 

彼女の創る理想郷に、自分の意を反する者は不要。

彼女こそが絶対で、彼女こそが正義。


アルレイヤの掲げた、民と王が同等に寄り添い合って生きて行く。

と言う想いを聞いた時、あの時は本当に吐き気がした。

王と民が同等?、なんと愚かな。


王と民では、天と地ほどの違いがある。

何も持たない愚図共は、選ばれし王《私》によって支配される。

そうすれば、必ず理想郷へと導く事が出来る。

このブリテン大帝国が大陸全土を統治し、王の元で全ての人間が何不自由なく、争いもなく、死する事なく永遠に生きる理想郷(アヴァロン)へと辿り着く為に。


我が理想を否定した、あの忌々しいアルレイヤを殺し。


聖剣エクスカリバーを手にすれば、私はこの世界で最強へと至る事が出来るだろう。


女神龍と交わり、番となった。


ふと、ソファーに跨る大女を見やる。


紅き、長髪に瞳。

滑らかな唇。

偉大さと高貴さに溢れた顔。

我が理想を肯定し、導くと語った。


彼女もまた、ソレを望む龍。


神龍であった姉龍を裏切り、龍族の神へと至った赤き龍神。


彼女と私は共犯者。


故に、恐れる事は何もない。

 

今はただ、願うのみ。


あの憎き妹。

あの忌々しき妹。

あの妬ましい妹。


あの愛しい…妹。


何故、こうなってしまったのか。


理由は、明白だ。


産まれて来なければ良かった。


そうすれば、私がこうも狂う事はなかったのに…ああ、早く死んで欲しい。

これ以上、私が壊れない為にも…消えて欲しい。


さすればきっと…



ーー理想郷(アヴァロン)へ辿り着ける筈だから。

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